研究課題/領域番号 |
16K03763
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
杉本 喜美子 甲南大学, マネジメント創造学部, 教授 (70351434)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 金融統合 / 資本流入 / 金融深化 / 銀行信用 / 株式市場 / スピルオーバー分析 / アフリカ |
研究実績の概要 |
アフリカ各国の資本流入が、資本のタイプ(FDI / 株式投資 / 債券投資 / 銀行貸出)においてどのような特徴を持っているのかを明らかにし、論文にまとめ始めており、2018年5月の学会で発表する予定である。ただし現時点では、アフリカの多くの国において、資本のタイプや資本の行先(銀行部門 / 企業部門 / 公的部門)に関して、該当するIMFやBISのデータを長期的に確保できないことが明らかになった。 そこで、新興国18ヵ国において、資本流入が、国内信用(企業向けと消費者向け)の配分を変えうるかを検証し、学会等で発表した。また、アジア諸国に注目し、その他新興国と比較して、国内要因(マクロファンダメンタルズや制度の質など)とグローバル要因(国際投資家が注目するVIXや先進国の金融政策など)のいずれが、こうした資本流入の動きを変えていくのかを、パネル分析で検証し、資本流入の実態を明らかにし、本の一章として、論文にまとめ始めている。 また、アジアの主要株式市場が、グローバル、よりくわしく言えば先進国(米欧日)の量的金融緩和策や正常化からどのような影響をうけているのか、Diebold and Yilmaz(2012)のスピルオーバー手法を用いて分析し、学会で発表し、論文を投稿した。この課題と手法をアフリカにおいても応用する予定で、現在データを集めている。 アフリカにおける金融市場と金融機関の発展に関して、Sahay(2015)が示す新しい基準(深度/アクセス/効率性)をもとに、アフリカ各国における金融部門の発展度合いを再整理・分類した。このデータを用いて、昨年度より行ってきた、金融統合と経済成長が非線形関係にある(国内金融の深化に関して閾値を設定)かどうか検証するパネル分析を、今年度中に再度実施すべく、閾値の内生性を考慮した推計方法を模索中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、アフリカにおける金融部門の発展と、金融のグローバル化および地域金融統合の促進が、経済成長の促進にどう貢献しうるのかを検討することを目標としている。今年度は、資本流入の動きに注目し、アフリカ各国の金融市場がグローバル化しているのかを、グローバル/地域からの影響の程度とその要因を推計により導出することで検証することに重点を置いていた。 しかし、アフリカ各国の金融市場がグローバル化しているのかを検証するために、資本流入のデータが必要であるにもかかわらず、分析に必要な資本のタイプや行先の細かなデータを、アフリカの多くの国で長期データとして確保することは難しかった。そのため、新興国に置き換えて分析することにした。その結果、この問題に対する答えをある程度は求められたものの、その答えがアフリカにも通用するか、という点で疑問が残り、本テーマへの達成度が遅れていると言うに至った。 ただし、アフリカにおける資本流入の多くが、資源保有国に向けてのものであり、近年のアフリカの成長と停滞は、資源価格の高騰と低迷にリンクしている国が多いことから、彼らにとって、資本の流入を享受しつつも、突然の流入停止(Sudden Stop)もしくは逆流という現象をどのようにすれば緩和できるのか、この点の分析をすることに方針転換することによって、本テーマへの道筋をつけるべく模索している。この分析は、アフリカ各国にとって、経済成長に貢献しうる金融部門の役割とは何かを、為替制度の選択をも含めて総括するという本研究の最終目的も含んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
アフリカにおける資源保有国が、Sudden Stopや資本の逆流という現象をどのようにすれば緩和できるのか、パネル分析を行うべく、推計式と方法に関してサーベイを始めている。この論文に関しては、フランスのAix-Marseille UniversityのGilles Dufrenot教授と共同研究を始めており、2018年12月に招聘し、研究発表する予定である。 アフリカ各国の資本流入が、資本のタイプ(FDI / 株式投資 / 債券投資 / 銀行貸出)においてどのような特徴を持っているのかを明らかにした結果は、本研究テーマである「アフリカにおける金融深化と経済成長:金融統合が果たす役割」に関連する多くの研究を総括したサーベイ論文の1章としてまとめ、為替制度の選択・金融政策の実施・資本規制・地域統合の促進という4つの問題をふまえて総括し、投稿する予定である。 アフリカにおける金融市場と金融機関の発展に関して、Sahay(2015)が示す新しい基準(深度/アクセス/効率性)のデータを用いて、昨年度より行ってきた、金融統合と経済成長が非線形関係にある(国内金融の深化に関して閾値を設定)かどうか検証するパネル分析を仕上げて論文を投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年3月に国際学会に参加する予定であったが、大学学内委員の予定と重複したため参加不可能であったことから。次年度は、共同研究者の招聘、国際学会への参加、データの購入などを既に計画しており、当初の最終年度予算を上回ることから、この次年度使用額を活用させていただく予定である。
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