研究課題/領域番号 |
16K03766
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
菅原 歩 東北大学, 経済学研究科, 准教授 (10374886)
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研究分担者 |
古賀 大介 山口大学, 経済学部, 教授 (50345857)
布田 功治 亜細亜大学, 経済学部, 講師 (70609370)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 国際金融センター / 国際金融市場 / ネットワーク分析 / 補完性 / 波及 / 中心 / 周辺 |
研究実績の概要 |
今年度は1年目であるため、研究のアプローチをメンバー間で共有しつつ分析の枠組みを精緻化し発展させることを中心とした。そのために当初の予定よりも多い3度の研究会を開催した。分析の枠組みの中心は、ネットワーク分析モデルの国際金融センター研究への適用である。その中での大きな進展は、2017年度の日本金融学会春季全国大会での金融史パネルセッションの開催を申請し採択されたことである。上記の金融史パネルセッションでは、国際金融センター群のネットーワーク分析、補完性の概念、センター間での金融取引フローの波及の概念の適用の中間結果を発表する。分析の枠組みでは、ネットワーク概念と補完性概念の関係を精緻化し、明確にすることが新たな課題として認識された。金融取引フローの波及については、タイにおいて中央銀行資料などの資料収集を行った。また、金融取引フローの波及については、1997年に通貨危機が発生し、波及概念の格好の検討対象であるアジアについてのデータベース構築を開始した。また今年度の個別の中間的成果として、第一に国際金融市場の概念の再検討を行い従来よりも具体的な像を得ることができた。中間的成果の第二として国際通貨制度と中心国・周辺国の経済パフォーマンスとの関係を明らかにすることができた。1900年から1971年で見ると、国際金本位制の時期にのみ周辺国の成長率が中心国を上回っていたこと、再建金本位制の時期に所得や貿易で国際金本位制を上回る成長があったこと、通貨ブロックの時期に中心国が比較的高い所得の回復を示したことなどいくつかの興味深い事実が明らかになった。この2つの中間的成果は現在印刷中である。中間的成果の第三としては補完性の検討対象であるユーロダラー市場の形成過程についてのディスカッションペーパーを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基本的な研究内容は、研究実績の概要で示した通りで順調である。それに加えて、2017年日本金融学会春季全国大会(5月)での金融史パネルセッションへの申請を行い、採択されたことが当初の計画を超えた大きな進捗であった。しかし他方で、研究メンバーが校務で重責の職務に着くなどの予想外の事態により、銀行コルレス関係のデータベース作成にやや遅れが生じている。これらを総合的に勘案すると、当初計画にない進捗と遅れがほぼ相殺されるので、おおむね順調な進行といえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究の分析枠組みの整備は次年度も今年度と同様に継続する。2017年日本金融学会春季全国大会の金融史パネルセッションで中間的成果を発表し、その後に取り組むべき課題を明確にする。銀行コルレス関係のデータベース作成では遅れを取り戻すために資源配分を拡充する。上記の金融史パネルセッションの開催を期にメンバーの拡充を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
銀行コルレス関係のデータベース作成に遅れが生じたためである。その理由は、研究メンバーが校務で予想外の重職についたことなどである。それらのためデータベース作成に関わる旅費の支出などがなされなかった。しかし他方で、そこで生じた研究資源の一部については、日本金融学会での金融史パネルセッションの開催を優先し、そちらの準備に振り向けた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は銀行コルレス関係のデータベース作成の優先順位を高める。今年度の未使用分を主としてこの銀行コルレス関係のデータベース作成のための資料調査旅費の拡充に使用して、適切に使用するとともに、銀行コルレス関係のデータベース作成の遅れを回復させる。
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