本研究計画は、中国・東南アジアのトイレタリー産業の歴史を主な対象とし、当該地域における外資企業や現地企業のマーケティング、特にマーケティング・チャネル戦略の歴史的変化について調査研究するものである。2021年度は研究計画の最終年度に当たり、今までの研究の総括となるような研究成果公表を進めると同時に、次の新たな研究計画に向けた布石を打った。
今までの総括となるような業績は、以下の3点である。(1)『マーケティング史研究』創刊号に「新興国におけるマーケティング史研究の可能性」という論文を執筆した。その中に、本科研費の成果を生かし、中国の日用化学(トイレタリー)メーカー、立白のチャネル戦略の歴史や、東南アジアの華人ネットワークと日本企業との関係史についての考察を展開した。(2)日本のライオンとタイのサハパット社との合弁会社タイライオンの経営史・マーケティング史についての研究成果が『経営史学』に掲載された。(3)タイにおける洗剤ブランドの発展史とマーケティングについての研究を取りまとめ、2021年9月に開催されたWorld Business History Conferenceで発表するとともに、論文を作成して海外学術雑誌に投稿した。
次に、今後の新たな研究に向けた布石として以下2点を行った。(4)中国の現地系・外資系トイレタリーメーカーのマーケティングの発展史とチャネル戦略の展開について、中国語資料を中心とする文献・資料の収集をさらに進め、原稿を加筆した。(5) Euromonitor社のデータベースを用いて、アジアのトイレタリーブランドや企業の業績の経年変化について、データを収集した。
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