最終年度においてこれまでの研究活動を成果としてまとめることに努めた。本研究では、第二次大戦後西ドイツの1950年代において地域に分散する手工業や小売商などの営業的中間層やその他の中小商工業経営が、設備投資等のための中長期信用の不足を訴えていた問題を取り上げ、その問題の分析のために、1955年11月に連邦経済省内に設置された「営業的中間層信用問題専門委員会」の議事録等の資料や貯蓄銀行による中間層信用に関する調査資料等を総合的に分析した。 連邦政府(連邦経済省)はこれらの営業的中間層などの中小商工業に対して信用供給するための市場機構整備を進め、それに基づいて貯蓄銀行や信用協同組合などの中間層金融機関は経営拡大や設備投資等のための資金を求める中間層経営のために、信用保証協会の保証と連携しつつ50年代末までに中長期信用を提供していくことになった。 本研究を進めるにあたって、ドイツ連邦文書館とノルトライン・ヴェストファーレン州文書館において資料収集に当たり、中間層信用政策の形成や諸利害の調整に重要な役割を果たした上記「専門委員会」の議事録を分析し、中間層政策の政策形成・調整過程を明らかにすることができた。また同資料収集中、1950年代中頃における中間層経営の信用需要調査報告書を発見し、この報告書の内容を分析することができた。これは本研究課題におけるとくにオリジナルな研究成果であると考えている。 本研究の成果は、論文「第二次大戦後西ドイツの中間層信用問題をめぐる政策形成と金融機関の役割」(掲載雑誌名は別記)として公表し、また社会経済史学会第88回全国大会(2019年5月19青山学院大学開催)において報告した。また研究期間中には間に合わなかったが、英文論文としても準備中であり、今後本研究テーマの分析を一層深めるとともにその成果の公開に努める予定である。
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