研究課題/領域番号 |
16K03781
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
柳澤 治 首都大学東京, 都市教養学部, 名誉教授 (00062159)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ナチス・ドイツ / 商品取引システム / 小売業 / 組織化 / 中間層イデオロギー / 戦時体制 |
研究実績の概要 |
本研究の目的の(1)の課題である、ナチス・ドイツの戦争準備・戦時体制における商品流通・取引機構を解明するために、2016(平成28)年度の実施計画に従い、商品取引の国家的規制機関であるライヒ取引所(Reichsstelle)に関する研究状況を整理するとともに、4カ年計画期・第二次大戦期における小売商業に焦点を合わせ、その実態と組織化、戦時経済体制の下でのライヒ取引所との関係、総力戦体制の下での小売商業の経営閉鎖政策とその実施状況、小売商人たちのそれに対する抵抗やナチス党内勢力、とくに親衛隊のオーレンドルフやハイラーらの中小経営維持の立場、シュペアらによる総力戦のための合理化政策に対する彼らの抵抗などの過程を実証的に分析した。 以上の研究に関する成果は以下のように公にされた。 (1)論文:柳澤治「ナチス期ドイツの小売業と中間層の立場」明治大学『政経論叢』第85巻1・2号、2016年11月、55-130頁。 (2)著書:柳澤治著『ナチス・ドイツと中間層-全体主義の社会的基盤―』日本経済評論社、2017年1月、i-x,1-388頁、とくに同第6章(303-375頁)。 これらの研究によって、ナチス期ドイツの戦争準備・戦時体制と、商品取引機構との関係、商品取引の最も重要な柱である小売商業の具体的な状況、その組織化、さらには戦争政策との関連が明らかになったばかりでなく、ヒトラー・ナチス党の全体主義体制の基盤をなす営業的中間層の核心部分でもある小売商人層の具体的動向、その利害、さらには中間層の維持・創出というナチズムの最重要イデオロギーとの関連が明確となったことは大きな成果と言ってよいだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記「研究実績の概要」に記したように本研究は「研究の目的」と2016(平成28)年度の「研究実施計画」にもとづいて実施され、学術論文1、著書1の成果を公にすることが出来た。その意義については上述した通りであり、本研究の「進捗状況」としては全体として良好とみなして良いと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は日本の大学図書館所蔵の関連文献・資料の閲覧・分析に加えて、外国、とくに本研究が対象とするドイツの文書館・図書館での資料・文献の調査・研究を必要とし、本研究計画のなかにそれを盛り込んでいる。2016(平成28)年度と同様、2017(平成29)年度、さらに2018(平成30)年度も同様の研究活動を予定しており、現在それに対する支障は生じていないので、これまで通り本「研究の目的」および「研究実施計画」にもとづいて研究を進める予定である。
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