研究課題
基盤研究(C)
ナチス・ドイツの戦時経済体制の下で商品流通・価格システムは、資本主義的な性格を維持しつつ、国家的に統制された。ライヒ取引統制所を中心とする流通システムは経済集団体制と一体となって配給体制を展開し、他方消費財取引を担う小売商業は経営閉鎖政策の対象とされた。価格システムもライヒ価格形成監理官によって統制され、国家的・公的発注品を中心に原価計算制と適正利潤の観点が商品価格の基準に設定された。上記の成果の一部は柳澤治著『ナチス・ドイツと中間層』(日本経済評論社、2017年)ほかに発表された。
経済史
ナチス・ドイツの経済体制は営利原則を否定し、反資本主義的であったとする見方に対して、本研究はナチス的戦時体制の下で流通・価格システムが国家的に統制されながらも、中小商工業を土台にした資本主義を基盤にして展開されたことを、また利潤原理は制度的に認められ、商品価格は生産コスト+適度な利潤の原則が基準とされたことを明らかにした。