研究課題/領域番号 |
16K03790
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
渡邉 恵一 駒澤大学, 経済学部, 教授 (00267387)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 鉄道史 / 民営鉄道 / 戦時国有化 / 戦時買収私鉄 / 払下げ運動 |
研究実績の概要 |
本研究の課題は、戦時体制期から戦後復興期にかけての日本の民営鉄道(私鉄)について、新資料の発掘・利用をともなった実証的考察を行い、これまで国有鉄道(国鉄)中心の概説にとどまりがちであったこの時期の鉄道史に、新たな視点を提起することにある。当該期における民営鉄道事業者の行動と論理を丹念に読み解き、より幅広い視野から日本における鉄道業の戦時と戦後をつなぐダイナミズムを明らかにすることを目的としている。 今年度は対象となる史料がほぼ絞り込めたことを受け、調査ならびに収集作業をさらに本格化させた。基本史料となる鉄道博物館所蔵の鉄道省文書、国立公文書館所蔵の旧運輸省所蔵文書、長崎県立長崎図書館所蔵の植木家文書、そして継続的に取り組んでいる青梅市郷土博物館所蔵の青梅電気鉄道文書がその中心となった。同文書については、年間を通じて月に1~2回のペースで調査・収集を行ったが、膨大なコレクションであり、取扱いにも慎重を要する保存状態でもあるため、史料の中身を1点ずつ確認して撮影していく地道な作業を続けている。 2017年10月に政治経済学・経済史学会秋季学術大会で発表した「復興期における戦時買収私鉄払下げ運動-青梅電気鉄道の事例-」の内容をさらにブラッシュアップさせる史料についても補足調査や追加収集を実施した。元帳あるいは原票の形態をとる一次史料のため、整理のためのデータ入力・確認が不可欠であり、文字の読解、記載情報の仕分けやその判断などに専門性を要するため、かなりの時間と労力を投入している。次年度においても引き続き取り組むこととしたい。 アウトプットとしては、年度内にまとめた研究成果に関する学会報告を2019年7月に予定している。また、関連する業績として鉄道史学会第36回大会(駒澤大学)における共通論題報告(報告者4名、コメンテーター2名)を企画・組織し、問題提起ならびにコーディネーターを務めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に進められた史料情報の入手・検討を生かし、本格的な史料の調査・収集に着手できた。収集された史料の整理・分析についても、その一部を年度半ばの全国学会大会で報告するなど、比較的順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の最終年度を迎えるため、史料の調査・収集という本研究課題の基本的方針を堅持しつつも、その分析作業について時間と労力をこれまで以上に傾注させたい。研究成果のアウトプットについても積極的に取り組み、学会等における口頭発表、学術雑誌等における論文発表などの実績をさらに充実させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度における研究機材(ドキュメントスキャナー)購入の執行および納品が今年度にずれ込んだことなど、史料の調査・収集日程の調整が所蔵機関との間で折り合わなかったことなどが主たる原因である。ただし、研究計画全体に大きな影響を及ぼす額ではなく、次年度において無理なく執行可能な範囲である。史料調査のスケジュールについても、所蔵機関との間で早めの調整を心がけたい。
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