研究課題/領域番号 |
16K03791
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
鈴木 俊夫 帝京大学, 経済学部, 教授 (00139982)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 投資銀行(インベストメント・バンク) / マーチャント・バンク / 証券取引所 / J.P.モルガン商会 / リーマン商会 / サブプライム・ローン / 証券化 |
研究実績の概要 |
昨年度までの科研費の研究成果となる欧州系のマーチャント・バンクと米国の投資銀行の関連史を整理し,さらに米国の投資銀行に関する一次史料のリサーチの課題を具体的に設定した。 米国の金融史や投資銀行史の分析視点を定めるべく,投資銀行に関する研究文献サーベイを実施し,これに基づき米国金融史に関する概説論文を執筆した。これは,前半部分で建国期の米国の金融制度となる州法銀行,個人銀行,時限的な中央銀行としての第一・第二合衆国銀行,国法銀行そして連邦準備銀行(中央銀行)の設立をふくめた発達史を示し,金融センターとしてのニューヨーク金融市場の成立を述べたものである。また,後半部分では個人銀行の後裔として投資銀行を中核に位置付け,ロンドン・マーチャント・バンクとのとの関係にも言及したうえで,投資銀行の発展史を整理した。投資銀行の経営行動に関しては,1980年代のソロモン・ブラザーズ社を典型とするように,従来のアドバイス業務を中心にした投資銀行業務から,個別債務の証券化を軸にして,自己取引勘定にもとづくトレーディング業務へと業務の重点が推移することを強調した。さらに,公開株式会社形態への改組を背景にしながら,この業務上の変化が2008年の「リーマン・ショック」の原因の一つとなることを指摘した。この研究成果は『続金融の世界史』の第5章(米国金融史)として,本年中に悠書館から刊行されることが決定している。 関連文献のサーベイに関しては,投資銀行業務の解説書や教科書,社史,経営者の伝記などを調査・収集したり,関連する書籍を発注・入手した。また,グラス・スティーガル法に結実する,1933年や1935年銀行法の制定や証券取引所の慣行・規制に関する米国議会の聴聞録を調査し分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献や資料所在情報を事前に慎重に調査・検討して研究計画を作成したため,研究課題の遂行に必要な書籍や文献を,おおむね順調に収集しつつある。また,これに基づく研究成果も着実に達成しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
書籍,新聞・雑誌論文,議会聴聞録のような印刷刊行資料の調査・収集には目処がついたが,肝心なリーマン商会やJ.P.モルガン商会の経営文書である一次資料の収集が,今後の中心的な課題となる。 Harvard Business School Baker Library を訪問して,所蔵史料のMss:783 1868-1986 L523 Lehman Brothers Records, 1868-2007のリーマン・ブラザーズ社の保存経営文書,さらに,同図書館所蔵のJ.P.モルガン商会の戦間期の有力パートナーであったトマス・ラモント文書(Thomas W. Lamont Papers, 1894-1948-Harvard Business School Baker Library所蔵MSSi783, 211-14 to 212-29 Senate Committee on Banking & Currency)などの一次資料を調査し,関連文書を収集する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
発注図書の未入荷と,投資銀行の経営文書に関する内外の一次資料の調査・収集が未実施のため。
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次年度使用額の使用計画 |
未入荷図書の購入,およびHarvard Business School Baker Library を訪問して,所蔵史料のリーマン・ブラザーズ社の保存経営文書Mss:783 1868-1986 L523 Lehman Brothers Records, 1868-2007およびトマス・ラモント文書(Thomas W. Lamont Papers, 18941948,MSSi783, 211-14 to 212-29 などの調査・収集を実施する予定である。
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