本研究は、戦前期の日本において、東南アジアからの「外米」輸入が断続的に活発化した現象を対象にして、(a)主食である米の需給構造とその特質、(b)外米取引の展開とその担い手、(c)質的に国内産米と異なる外米の消費の実態、についての実証的考察とを目的とする。本年度の研究実績は次の通りである。 1.資料の調査・収集:上記(a)について、前年度より継続し、東京とその周辺の資料所蔵機関において、統計資料、農業・食糧・貿易政策の関係資料等を調査・収集した。(b)について、国内では、前年度に引き続き、(a)と同様の諸機関において関係資料等を、デジタル化資料も含め調査・収集した。また海外では、英国ロンドンの国立公文書館National Archivesにおいて、外米産地の英領ビルマや、取引の拠点香港など東アジアの英国外交官の報告書等を、また大英図書館British Libraryにおいて、「インド省文書」などから、ビルマの米生産・流通関係の諸資料を調査し撮影により収集した。(c)戦前期の米・小麦等をめぐる国内の主食消費の特質やその変化、地域性等について、新聞記事、経済雑誌記事等を調査・収集を継続した。 2.収集資料の整理・分析:海外収集資料については、撮影データをリストを作成するほか、収集資料のスキャニングによる電子化・整理、文字・数値データの入力作業を行った。また、1880年代~90年代を中心に、外米輸入の本格化について、収集資料の整理・分析をすすめた。 3.研究成果の公表:米穀輸出が活発化した1890年代末からから輸入が急増する1890年代初頭の変化に注目し、米穀輸入の急増が可能になった諸条件を解明するため、当時の貿易統計、経済雑誌、政府関係の諸刊行資料などにより論文を作成して公刊した。
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