研究課題/領域番号 |
16K03796
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
田島 佳也 神奈川大学, 経済学部, 教授 (40201610)
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研究分担者 |
坂根 嘉弘 広島修道大学, 商学部, 教授 (00183046)
落合 功 青山学院大学, 経済学部, 教授 (10309619)
松村 敏 神奈川大学, 経済学部, 教授 (60173879)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 資産家 / 銀行家 / 商家経営 / 地主経営 |
研究実績の概要 |
平成29年度においては、前年度に引き続き、広島県立文書館において、8月上旬および3月上旬に必要な史料のデジカメ撮影を共同で行い、かつ3月においては同文書館において研究会を開催した。さらに橋本海鶴の明治10年代から大正後期における日記である「海鶴堂日記」(おのみち歴史博物館保管)のデジカメ撮影を行い、メンバーで共有した。 また従来、史料分析に必要な橋本家の正確な家系図がなかったため、青木茂氏旧蔵文書のなかの「橋本氏先祖記」や同家の菩提寺である尾道市滋観寺の橋本家墓地の墓碑調査を複数回実施してデータを集め、可能な限り正確な家系図を作成し、それも重要な手掛りとして史料分析を行った。 この結果、幕末明治初年に、角灰屋当主の橋本静娯の主導のもとで、本来の本家たる東橋本、および絶家していたと思われる中橋本と西橋本の3家の再興と再建が行われたことが明らかになった。具体的には、後継者がいないため、甲山町や愛媛県西条などから養子をもらい、静娯の娘を嫁がせたり、静娯の実弟を継承者とするなどして、3家とも角灰屋と血縁関係がある一族となった。 このほか、明治13年には、橋本静娯は隠居し、次代の海鶴が若くして、第六十六国立銀行の役員に就任し、その経験から、自家の経営帳簿も複式簿記をベースとした試算表を作成し、自家経営の概要を把握しやすくしていたこと、一族各家とも番頭の役割が重要であったが、角灰屋については、静娯-海鶴-龍一と、代を経るごとに当主の経営への直接のかかわりが深くなっていったこと、番頭任せではエージェンシー・コストが大きくなるため、自家経営を「本業部」「別方」「隠居部」「奥直轄」など複数の会計にわけてリスク分散していたことなど、新たな発見が少なからず得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初から、基本史料の所在状況は判明していたため、スムーズに史料収集と分析が進めることが可能であった。 また史料中に存在せず、研究を進展させるに際して、ネックになっていた家系図も、研究協力者の努力もあり、作成することができ、また尾道市立図書館に所蔵の重要な刊本も、発見したため、実証面では研究史を乗り越える進展がみられた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年である平成30年度は、塩田経営の実態、第六十六国立銀行・芸備銀行の特徴・性格の分析を行い、また橋本家自家経営のとくに明治前期の実態解明に力点を置いて分析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が定年退職に伴う雑事のため本年3月出張予定を取りやめたこと、研究協力者が使用予定だった出張費が本務の都合で使用しなかったことによる。 調査のための出張旅費の必要は少なくないことと、調査旅費支出を優先するためこれまで必要な書籍購入を差し控えていたことがあり、それらに使用する予定。
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