研究課題/領域番号 |
16K03800
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研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
張 楓 福山大学, 経済学部, 准教授 (30467758)
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研究分担者 |
北浦 貴士 明治学院大学, 経済学部, 准教授 (00633489)
柳沢 遊 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 名誉教授 (20174542)
平山 勉 湘南工科大学, 工学部, 准教授 (20306864)
松村 敏 神奈川大学, 経済学部, 教授 (60173879)
高柳 友彦 一橋大学, 大学院経済学研究科, 講師 (80588442)
満薗 勇 北海道大学, 経済学研究院, 准教授 (40735750)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 備後地域 / 機械工業 / 造船業 / 商店街 / 鉄鋼業 / 金融 / 漁網 / 観光 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、戦前・戦後における多様な産業・企業をもつ地方工業地帯としての備後地域のダイナミックな形成過程を、実証的かつ総合的に検討することにある。研究代表者の張楓は、備後地域の機械工業集積に関する分析を進めている。分担者の研究実績は以下の通りである。松村は戦後高度成長期以降の備後地域における中手造船企業である常石造船、尾道造船、幸陽船渠のほかに、さらに比較対照として今治造船各社の財務データ等を収集し、また戦後備後に存在した唯一の大手造船日立造船の経営推移についての分析を進めている。柳沢は、1965~75年の福山商工会議所の商店街調査・商業調査について資料を収集し、これらの調査の方法、担い手、課題意識について、商工会議所塑像資料のほか、新聞資料などから明らかにし、そこで広島県中小企業指導所がおおきな役割を果たしていることを解明した。高柳は、景勝地である鞆の観光地化のあり様から備後地域の観光産業の歴史的展開を明らかにすることを目的に、戦前・戦後の鞆町(現福山市)の行政や地元住民による観光行政や活動の具体的な実相に関する分析を進めている。満薗は福山市の商店街に関する研究に取り組んでおり、主に1980~90年代における大型店の進出と地元商店街との関係を通して、当該期の地域商業のありようについて検討を進めている。北浦は長年にわたり備後地域経済を牽引してきた日本鋼管福山製鉄所が、日本鋼管の本社及び備後地域経済の両方にとって、どのような存在であったのかについて様々な資料を集中することにより明らかにしている。平山は地方銀行としての広島銀行の備後地域企業に対する融資の動向について広島県立文書所蔵資料を収集することにより分析を進めている。協力者として加わっている植田は、戦前・戦後の地域経済と深く結びつきながら展開してきた漁網産業の歴史的な分析について日東製網を事例に行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度に福山大学サテライトキャンパス内(2017年9月)と東京大学経済学研究科研究棟(2018年3月)で2度の研究会を行い、研究者間の進捗状況を共有するとともに、2018年10月開催予定の年度政治経済学・経済史学会秋季全国大会(一橋大学)でのパネルディスカッション報告への準備を進めている。代表者としての張楓は、機械工業にみられる多岐にわたる様々な業界団体や協力会、企業より1次・2次資料の収集をさらに行い、その成果として2017年度7月に大阪大学で開催された企業家フォーラム全国大会で報告を行った。松村は常石造船、尾道造船、幸陽船渠、今治造船各社の財務データ等を収集した。柳沢は福山商工会議所にて「商業診断報告書」「商店街ニュース」「中国新聞記事」などの膨大な1次・2次資料の収集に成功している。満薗は福山商工会議所所蔵1次・2次資料を収集するとともに、大型店をめぐる地域の動向に詳しい福山大学元教授に対する聞き取り調査も行った。北浦は、日本鋼管の有価証券報告書の収集のほかに、生活意識調査に関する調査資料の収集も行った。高柳は、福山市史編纂室と広島県立図書館の所蔵資料を収集している。平山は、広島銀行関係文書の収集・分析を進めている。研究協力者の植田は、戦前の鞆製網会社及び日東製網に関する有価証券報告書の分析とともに、日東製網本社所蔵の1次資料や社内報の収集を行った。全体の研究進捗状況は、研究代表者が地元大学で研究活動を行っていることもあり、市史編纂室や商工会議所、企業への迅速な働きかけにより、大きなトラブルがなく、当初の予定通り、おおむね順調に進展していると認識している。
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今後の研究の推進方策 |
多岐にわたる実証分析のなかで、とりわけ金融分野における資料調査はやや遅れ気味で、また造船に関する立ち入った業界分析や個別経営分析は求められている。最終年度にあたって、これまで収集した資料の分析を進めながら、各自担当分野の論文の執筆とさらなる調査を行っていく。また2019年度中に論文集として刊行する計画を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
ひきつづき、備後地域の各産業に関する資料調査などを行うとともに、2018年9月6~7日に東京で科研共同研究会を開催するほかに、また10月20~21日に一橋大学で開催される2018年度政治経済学・経済史学会秋季学術大学でパネル・ディスカッション報告を行う予定である。それぞれ現在準備を進めている。
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