研究課題/領域番号 |
16K03809
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
加藤 厚海 広島大学, 社会科学研究科, 教授 (10388712)
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研究分担者 |
下野 由貴 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (20379473)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 産業集積 / サプライヤー・システム / 系列 / 日系企業 / タイ / 工業団地 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、タイにおいて、日系自動車メーカーとTier1サプライヤーおよびTier2サプライヤーが、どのように連携を行いながら、取引関係を構築しているのかを明らかにし、その結果として、タイの産業集積の形成と発展について解明することである。データの収集にあたっては、8月、9月、3月に、現地と日本でインタビュー調査を行った。具体的には、大手日系自動車メーカー(トヨタ、日産、いすゞ、AAT(マツダ))、Tier1サプライヤー(デンソー、カルソニックカンセイ、矢崎総業、タイサミットグループ、アピコ)およびTier2サプライヤー本社を訪問した。 また、産業集積を検討する上で、日系企業が多数入居している工業団地の開発運営会社(アマタ社、WHA社、ピントン社)と、それに付随する日本人社会(シラチャ)についても調査を行った。 調査の結果、日系企業のサプライヤー・システムでは、サプライヤーを積極的に支援する育成購買が行われており、日系・現地サプライヤーへは同様の指導がなされていた。また、多くの機能部品では、日本の開発拠点とタイの生産拠点が密接に連携して、開発・生産を行っており、タイは海外拠点ではありながらも、日本本社との連携を重視する形で、企業間関係(系列)が、タイで複製されていた。その理由としては、世界戦略車の同時立ち上げ生産が増える中で、開発機能が日本へ集約されると共に、タイを含む世界の各拠点で、同一のサプライヤーが選別されていく傾向があることが背景にあると考えられる。 したがって、自動車産業では日系企業の海外展開が進むほど、開発については日本本国との連携が求められ、既存の系列関係が有利となる傾向があり、そのことがタイにおいて日系企業中心の産業集積を生み出すと共に、副産物として特異な日系人社会を生み出してきたことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地にて、データの収集を進めており、今のところ、概ね順調に進んでいるといえる。ただし、大学の夏休みと春休みを使った、年2回程度の海外調査であるため、工業団地の発展と日系社会の形成については、現地での人脈なども十分ではないこともあり、十分な情報収集が進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は、2回の海外調査(合計1カ月程度)を計画している。基本的には、現地でのインタビュー調査を中心としており、日本での自動車メーカーと連携した開発およびアセアン戦略を解明するために、サプライヤーの日本本社の調査も並行して進めていく予定である。 一方で、タイ自動車工業会のデータ、アイアールシーのデータを利用した分析を行う予定であるが、詳細なデータベースではないため、統計解析を行うことは難しいと考えている。また、産業集積の発展として、ハード面での工業団地の開発・発展、ソフト面での日系社会の形成・発展についても調査を継続していくことになる。こちらについては既存の研究はほとんど皆無であり、さらに現地での人脈を開拓し、地道なインタビュー調査を重ねていく方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
残り残額では、高額な専門資料の購入ができず、また、長期滞在の海外調査もできないため、次年度への残金とした。
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次年度使用額の使用計画 |
高額な専門資料の購入に加えて、長期滞在の海外調査費用に使用する予定である。
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