研究課題/領域番号 |
16K03810
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
中田 範夫 山口大学, 経済学部, 教授 (90146142)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 公立病院改革 / 組織形態 / マネジメント手法 / BSC / 原価計算 / 内部環境 / 医療費用収益率 / 非財務的指標 |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究計画では、「公立病院」およびそれ以外の病院に対して郵送によるアンケート調査を実施することであった。 実際には「公立病院」に対するアンケート調査を実施した。アンケートは公立病院と公立診療所の合計1,095箇所へ発送し、有効回答数286(26.1%)を得た。今回のアンケートは将来研究のベースを為しているものであり、「組織、環境、経営管理手法と財務・非財務業績」の関係は次稿以下において報告する。今回の研究内容には次のような内容が含まれている。1.今回の調査と過去6回の調査との比較を行うと次のことが判明した。BSCの採用については市町村立病院ではやや高め、そして都道府県立病院ではだいぶん少なめにデータが出ている。原価計算については、過去の調査に比較して、市町村立病院では2倍近く高めに、そして都道府県立病院では3分の1から4分の1とかなり少なめにデータが出ている。2.今回初めて収集した診療所の情報については、看護配置7対1、DPC,BSC,および原価計算の採用に関してはほとんど採用されていない。これに対して、採用率は低いが診療所でも採用されているのは、電子カルテ、アウトソーシングなどである。さらに、医業費用収益率は病院と診療所を合わせて10区分の中の8番目と9番目(無床診療所と有床診療所)という状況である。 さらに、郵送調査後に公立病院に対して県内の公立病院について幾つか訪問調査を実施し、話を聞くことができた。特に、地方独立行政法人山口県立病院については、小生はこの病院の評価委員会のメンバーであり、日頃からその内容には精通している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究年度初年時において全国の公立病院・診療所に対して郵送調査を実施した。発送総数1,095か所に対して、回収数は297か所であった。そのうち有効回答数は286であった(26.1%)。 今回の調査により、次のことが判明した。①今回の調査では、BSCの採用については市町村立病院では9.6%、そして都道府県立病院では23.1%であった。この数値は、過去実施した6回の調査と比較して、市町村立病院ではやや高め、そして都道府県立病院ではだいぶん少なめに出ている。②原価計算に関しては、市町村立病院では11.4%、そして都道府県立病院では2.6%であった。これは過去の調査と比較すると、前者においては2倍近く高めに、そして後者においては3分の1から4分の1という状況である。 ③今回初めてデータを収集した診療所についてはいろいろな点において新しい知見を獲得できた。
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今後の研究の推進方策 |
すでに回収したデータを論文にまとめているが、今後は、こうしたデータを利用して次のような分析を行う予定である。 すなわち、次稿では「組織形態-内部環境・マネジメント手法-財務・非財務業績」の関係を明らかにするつもりである。組織形態としては、地方公営企業法一部・全部適用、独立行政法人(公務員型、および非公務員型)、指定管理者制度を考えている。内部環境としては、電子カルテ、看護配置、DPCなどを考えている。マネジメント手法としてはDPCと原価計算を考えている。財務的業績としては医療費用収益率を、そして非財務的業績としては平均在院日数と病床稼働率を考えてる。 さらに、公立病院以外の病院種類についても同様な調査を実施し、公立病院における結果とを比較し、何らかの結論を導く予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
28年度の計画では、公立病院以外の病院についても郵送アンケート調査を実施する予定であった。しかし、実際には公立病院のみの調査しか行わなかったため、郵送費で残額が生じた。29年度は、公立病院以外の病院についてもアンケート調査を実施する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
公立病院以外の病院2,000カ所に対して郵送調査を実施する予定である。そのための予算328,000円(2000×2×@82円)。郵送調査にかかわる業務及び資料整理アルバイト代金として80,000円を予定している。郵送調査した病院への訪問調査(3カ所)旅費として120,000円、そして研究会へ出席するための旅費として(2つ)100,000円を計上している。プリンターの購入費用として22,000円を予定しており、これらの費用に充てる。。
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