研究課題/領域番号 |
16K03812
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
中西 善信 長崎大学, 経済学部, 准教授 (30755905)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | コーペティション / 制度 / バーゲニングパワー / 独占的サプライヤー / 組織学習 |
研究実績の概要 |
本研究は,コーペティションすなわち競合関係にある企業による協力行動に関して,① ライバル企業間におけるつながり形成条件の解明,及び,② ライバル企業への知識提供行動促進要因の解明を目指すものである。このため,日本の航空会社が,NDB(navigation data base: 航法用データベース)の独占的サプライヤー(Z社)に対して取っているコーペティション行動を,主な題材として検討を進めてきた。特に,航空会社がZ社に対する共同要望を提出するために意見調整を行う場である「NDB会議」の活動の内容を分析してきた。 これまでにデータ収集のため,関係者18名に対して半構造化面接を行った。また,会議の参与観察を計3回行った。さらに,これらのデータを,NDB会議議事録,Z社プレスリリース等の2次データにより補強した。得られたデータは,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチに準じて分析した。 検討の結果,航空会社間のつながりを促す要因として,NDB会議を通じた活動が,参加企業の共通の利益に通じていた点が見出された。NDB会議を通じた活動は各社に同じように便益をもたらしていたのである。特に,独占的サプライヤーであるZ社の存在が航空会社による協調を促していた。すなわち,航空会社として,結託してバーゲニングパワーを強める必要があったのである。 一方,ライバル企業への知識提供を促進要因として,NDB会議の活動が,安全性向上など,公共の利益につながるものである点が見出された。さらに,背景要因として,活動を通じてNDB会議参加者が強い仲間意識を持つに至った事実が見出された。 これらの成果を,日本経営学会第90回大会及び経営行動科学学会第19回年次大会において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り,インタビュー等のデータ収集及び修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチによる分析,並びに,学会発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後,前年度に引き続き,コーペティションに係る,① ライバル企業間におけるつながり形成条件の解明,及び,② ライバル企業への知識提供行動促進要因の解明を継続する。 まず,前年度入手したデータに関して,これまで学会発表を行ってきたところであるが,論文としての執筆・投稿を進める。 また,異なるサンプルからのデータを収集するため,国外や,航空産業以外でのコーペティション状況に関する調査を進める。その際,制度的環境(法令,規制,業界規範等)の影響に関して検討を行う。これまでの検討を通じて,これら制度的環境の重要性が徐々に明らかになってきたためである。 加えて今後,アソシエーション(業界団体,職業者団体,学会等)がコーペティションを通じた知識移転に及ぼす影響に関する役割に焦点を当てて調査を行う。このためアソシエーション関係者に対する面接調査や,アソシエーション主催の会議体への参与観察を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在繰越金を含め29年度予算として約170万円ある。繰越金が生じた理由は,平成28年度において参与観察を予定していた国際会議の開催が主催者側の理由等により平成29年度に延期されたことにある。 このため,当該会議参与観察のための出張旅費,及び,会議音声等のテープ起こしに関する支出が次年度に持ち越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
持ち越し分となったものを含め,平成29年度において,以下の国際会議参与観察のための出張を予定している。 ① IFP (Instrument Flight Procedure Conference) Conference(主催者: Air Navigation Institute)(2017年6月 ポルトガル)(40万円),② Instrument Flight Procedure Panel Working Group 14-2(主催者: International Civil Aviation Organization)(2017年9月 カナダ)(50万円),③ Instrument Flight Procedure Panel Working Group 14-3(主催者: International Civil Aviation Organization)(2018年3月 スイス)(50万円)
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