研究課題/領域番号 |
16K03813
|
研究機関 | 城西大学 |
研究代表者 |
井上 昌美 城西大学, 情報科学研究センター, 研究員 (10640914)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 統合報告書 / CSR / コミュニケーション |
研究実績の概要 |
第一に、主に2017年に発行された、統合報告書に関わる報告書やガイダンス等(例:「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス」)について検討した。その結果、企業と投資家の対話の促進、経営戦略や非財務情報等の開示やそれらの評価等について示されているため、今後の統合報告書の内容(特に質の向上)に影響を与えることが分かった。第二に、統合報告書の発行企業数が急増した為、統合報告書の内容の変化について確認した。その結果、統合報告書の内容が次第に進化していることが分かった。特に、「統合思考」に基づき、自社のビジネスモデル等の企業価値の創造のプロセスについて、整理・開示する企業が増えてきた。第三に、統合報告書を発行している企業1社、発行を検討している企業2社に対し、インタビュー調査を実施した。その結果、発行企業では、統合報告書による効果を認識しており、特に従業員への効果を挙げていた。検討中の企業では、「統合思考」を含む社内での課題が解決した段階で発行する予定としていた。これらのインタビュー調査の結果は、アンケート調査項目に反映させている。第四に、前年度、回答者数の確保の困難さ・回答の妥当性に関する懸念により見送った、統合報告書に関するアンケート調査を実施した。研究計画では、研究期間中に調査対象である従業員と個人株主を分けて実施する予定であったが、対象の抽出法や質問票の工夫により、一度の調査で同時に実施することができた。その結果、インタビュー調査で確認したように、統合報告書は、従業員における自社の経営全般に対する理解の促進に役立っていることが分かった。また、発行回数が多い企業ほど、「統合報告」の本質的な課題と、「統合思考」に基づく経営改善の難しさを認識していた。個人株主は、統合報告書において、配当性向や経営ビジョンに関する説明を求めていることが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
統合報告書や関連する報告書・ガイダンス等に関する研究会やセミナーに積極的に参加し、最新動向の確認、ヒアリング調査・アンケート調査に関する情報の収集を行い、研究に反映することができた。また、アンケート調査の仮説の導出につながるインタビュー調査を、統合報告書を発行している企業と未発行の企業の両方に実施することができた。更に、研究期間中において、対象を分けて実施予定のアンケート調査 (前年度未実施であったアンケート調査を含む)を、工夫することで同時に実施することができた。そのため、種類の異なる回答者の比較も実施することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
第一に、アンケート調査・分析結果について学会で発表し(現在申請中)、発表に対するコメント等からの示唆に基づき、研究内容を更に検討し進める。 第二に、引続きインタビュー調査を実施し、統合報告書の発行回数の少ない企業と多い企業の比較を実施する。第三に、統合報告書の発行企業数の増加や内容の変化があると予想されることから、統合報告書の内容分析を進めつつ、アンケート調査の実施を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
旅費については、所属機関の異動により関東圏内からの移動・出張となったこと、インタビュー調査の対象として地方企業の検討を控えた等により、予定していたほどの費用が掛からなかった。その他については、アンケート調査費が予定していた金額より大幅に削減できた。その理由は、統合報告書の認知度が向上し、回答者の抽出に関わる事前調査費用がかなり削減できたこと、また、研究期間中の各年度において、対象を分けて二回実施する予定であったアンケート調査を、対象の抽出法や質問票の工夫により、一回の調査で同時に実施できたからである。
|