• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実施状況報告書

ネットワークと制度からみる市場メカニズムとイノべーションの研究

研究課題

研究課題/領域番号 16K03817
研究機関青山学院大学

研究代表者

中野 勉  青山学院大学, 国際マネジメント研究科, 教授 (10411795)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードpragmatic valuation / valuation studies / valorization / オーディオ産業 / ネットワーク分析 / 市場と価値 / イノベーション / 認知
研究実績の概要

本研究は、ネットワークの視点から考えるイノベーションを生み出す市場のメカニズムに関して、その理論化と実証について考察を深めることを目的とする。オーディオ産業、エシカル・ファッションなどの「創造的な産業」を対象とするが、方法は、諸概念を統合的に応用し、ネットワーク分析による産業レベルでのマクロからの関係性の構造分析を行う一方で、その内容に関して、フィールドワークを含めたマイクロ・レベルでの分析により、市場価値の評価の問題を扱った。文献整理、定量及び定性データ収集、分析、理論の再考を進め、研究会や学会で成果の発表をしながら、出版に向けた作業を進めた。特に、 研究代表者は、2015年9月から1年間のサバティカルを得たことにより、本務校を基点としながら、価値の研究 (valuation sutdies) 分野にで世界の先端研究を行うアメリカ及びヨーロッパの研究機関に招待教授や研究者として在籍し、様々なプロジェクトに参加、多くの先端研究者と意見交換をしながら、共同研究の可能性も探ったことで、本研究は大きく進展した。日本にほとんど知られていないこの先端研究を行っている欧米の機関での在外研究の意義は本研究には極めて大きく、この間、日本とヨーロッパ諸国を中心に、オーディオ産業、エシカル・ファッションのフィールドワークを行いながら、市場の評価メカニズムなどについて、色々な研究会や学会で10回ほどの発表を行った。経済社会学の立場から、欧米に比べ大きく研究が遅れている日本の経済社会学の現状の中で、市場と価値評価の研究に、ソーシャル・ネットワークの視点からアプローチすることで、本研究は世界の先端研究に貢献できるばかりか、企業のマーケティング、企業戦略、CSR戦略などへの大きなインプリケーションが期待できる。日本でこの分野を確立すべく、出版と啓蒙活動に取り組んでいる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

文献整理、ネットワーク・データの収集、フィールドワークを行った後、分析が進行している。研究期間中のアメリカ、フランス、デンマーク、ドイツ滞在中に、イギリスまで含め、フィールドワークとして、ヨーロッパのオーディオ産業及び「エシカル・ファッション」のリサーチを行った。これらの国々にはハイエンド・オーディオ及びアパレス・ファッションのステータス・マーケットやCSR関連の先端ビジネスがあり、展示会、企業訪問、小売店、プロショップ、セレクトショップを訪問し、インタビューや文献・資料の収集と情報分析を広範に行った。オーディオ産業とアパレル産業については、業界団体、ブランド、問屋制度などについて、企業間ネットワークのデータはかなり入手できたので、さまざまな分析を行っている。また、日本と海外での研究期間中は、様々な研究会で多くの専門家から批判を仰ぐことで、理論化と実証の方法論についてさらなる再検討を行った。オーディオ産業におけるアナログからデジタル文化への変化、オーディオ批評家の役割と市場価値の安定化、市場創造におけるイノベーションのメカニズム、「エシカル・ファッション」のネットワークと認証機関の役割や市場価値の創造などのトピックについて、本研究が大きく進展している。これらの研究成果の一部は、論文として英語・日本語で発表しながら、本格的な学術出版の準備を行っているが、課題としては、9月の帰国以来、多くの様々な事務作業、講義などの教育の仕事、関連する2冊の学術書の出版作業に追われ、日本語や英語での専門学術誌への投稿のための執筆の時間が取れないことである。

今後の研究の推進方策

今後は、分析を本格化させながら、さらに研究を発展されると同時に、まとめの作業を進める。特に、本研究から得られた知見を含め、市場の安定化と価値評価の分野を日本に確立すべく、広く啓蒙活動を行い、社会への還元を目指す。具体的には、2016年の組織学会での発表などに続き、2017年7月の EGOSなどの学会で発表し、様々な角度から批判を受けるものとする。これらを基に、研究年度以降に最終的には5本程度の英語・日本語の学術論文として査読付きジャーナルへの出版を目指す。
また、論文や叢書としてまとめることで、その理論、方法論の斬新さと新規性から、経済社会学、組織論、経営学などの社会科学分野のみならず、ビジネスとマネジメント実務を含め、社会に成果を十分還元することができるものである。現状で具体化しているのは、2017年8月には『ソーシャル・イノベーションと戦略マネジメント―ネットワークとデザイン戦略』(有斐閣)の単著出版を予定しており、その中で、市場と価値の問題を大きく扱うことで、本研究の成果を還元する。また、オーディオ産業の価値と評価 (valuation and evaluation) のメカニズムに焦点を当てた単著論文を英語での編著 T. Nakano edsl. Japanese Management in Evolution (Routledge 2017) に収録し、7月に刊行予定である。

次年度使用額が生じた理由

88,166円の次年度繰越が発生したが、これは2016年度の学内申請締め切り日より2日月ほど前に、本務校の研究支援課に予算全額を使い切る領収書などの帳票書類を提出したが、研究支援課で最終的に執行を認める金額を確定したのが、3月末のタイミングとなったためである。これ以外にも88,166円以上の立て替え払いの領収書などは持っていたが、研究支援課での作業に時間がかかったために、再提出する機会がなかったので、残念ながら全額分を申請することが出来なかったのが理由です。

次年度使用額の使用計画

今年度は7月のデンマーク、コペンハーゲン市での European Group for Organizational Studies の年次大会及び8月のアメリカ、アトランタ市での Academy of Management 年次大会での発表が決まっており、旅費や参加費の一部として是非使わせていただきたい。また、もし旅費や参加費として使えないのであれば、最近PCから立ち上げの際に異音が出ることが多くなり、PCの買い替えのための費用の一部として使わせていただければ幸甚です。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] 「ハイエンド・オーディオ市場における競争と協調のメカニズム―ネットワーク関係性からプラグマティックな価値評価へ」2016

    • 著者名/発表者名
      中野勉
    • 雑誌名

      組織学会大会論文集 (Transactions of the Academic Association for Organizational Science)、

      巻: Vol. 5 No.2 ページ: 41-48

    • オープンアクセス
  • [学会発表] プラグマティックな価値評価ー良い音とは何か?2017

    • 著者名/発表者名
      中野勉
    • 学会等名
      文化研究会 January 31, 2017.
    • 発表場所
      東京大学
    • 年月日
      2017-01-31
    • 招待講演
  • [学会発表] 『ネットワーク関係性から「プラグマティックな価値評価へ」―ハイエンド・オーディオ機器市場における協調のメカニズム』2016

    • 著者名/発表者名
      中野勉
    • 学会等名
      組織学会本大会
    • 発表場所
      上智大学
    • 年月日
      2016-10-09
    • 国際学会
  • [学会発表] “Valuation Practices in Transition: From the Analogue to the Digital High-End Audio”2016

    • 著者名/発表者名
      Nakano, Tsutomu
    • 学会等名
      4S/EASST 2016 Conference: Science and Technology by Other Means. Track Title: Valuation practices at the margins, Barcelona, Spain,
    • 発表場所
      Barcelona, Spain
    • 年月日
      2016-09-01
    • 国際学会
  • [学会発表] Seminar presentation, "Attachments as Market Mechanism: 'Imaginative Value' in the High-End Audio Market "2016

    • 著者名/発表者名
      Nakano, Tsutomu
    • 学会等名
      Max Planck Seminar, Max Planck Institute for the Study of Societies
    • 発表場所
      Cologne, Germany
    • 年月日
      2016-07-18
    • 招待講演
  • [学会発表] “Advantages of Small Firms in the Age of Digital Economy Standardization: Evidence from the Global High-End Audio Market and the ‘Ethical Fashion’ Japan”2016

    • 著者名/発表者名
      Nakano, Tsutomu
    • 学会等名
      Seminar Series: Protecting the Weak, Interdisciplinary Centre for East Asian Studies (IZO), Goethe Universit,
    • 発表場所
      Frankfurt am Main, Germany
    • 年月日
      2016-06-22
    • 招待講演
  • [学会発表] “Pragmatic Valuation of Sound Quality in the High-end Audio: Audiophiles and Product Reviewers”2016

    • 著者名/発表者名
      Nakano, Tsutomu
    • 学会等名
      4th Interdisciplinary Market Studies Workshop
    • 発表場所
      University of St. Andrews Business School, Scotland,
    • 年月日
      2016-06-09
    • 国際学会
  • [学会発表] Paper Presentation, “Pragmatic Valuation of Sound in the High-End Audio and the Impact of Emerging Digital Infrastructure on the Practice of Music-Sound Tasting”2016

    • 著者名/発表者名
      Nakano, Tsutomu
    • 学会等名
      Workshop on Collaboration on Knowledge Infrastructures and Energy, A Joint Research Seminar between University of Edinburgh and Copenhagen Business School
    • 発表場所
      Edinburgh, Scotland
    • 年月日
      2016-06-06
  • [学会発表] Seminar Presentation, “What is ‘Good’ Sound?: Pragmatic Valuation in the High-End Audio”2016

    • 著者名/発表者名
      Nakano, Tsutomu
    • 学会等名
      Market Seminar #3, IOA, Copenhagen Business School
    • 発表場所
      Copenhagen, Denmark
    • 年月日
      2016-05-30
    • 招待講演
  • [図書] ソーシャル・イノベーションのデザイン戦略(仮題)2017

    • 著者名/発表者名
      中野勉
    • 総ページ数
      280
    • 出版者
      有斐閣
  • [図書] Japanese Management in Evolution: New Directions, Breaks, and Emerging Practices2017

    • 著者名/発表者名
      Nakano, Tsutomu eds.
    • 総ページ数
      350
    • 出版者
      Routledge

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi