研究課題/領域番号 |
16K03820
|
研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
梅原 英一 東京都市大学, メディア情報学部, 教授 (00645426)
|
研究分担者 |
小川 祐樹 立命館大学, 情報理工学部, 助教 (40625985)
諏訪 博彦 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (70447580)
渡部 和雄 東京都市大学, 知識工学部, 教授 (90244532)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ソーシャルメディア / 自然言語処理 / 統計分析 / 株式市場 / 利用者モデル |
研究実績の概要 |
第一に株式市場とソーシャルメディアの関係を分析している.ソーシャルメディアを用いて恐怖指数と呼ばれるVI 指数の上昇を予測する手法を提案した.本手法は,Yahoo!株式掲示板に投稿されたメッセージを取得し,形態素解析により形態素に分割する.この形態素をインプットデータとして,トピックモデルを用いて各メッセージをトピックに分類する.各トピックのメッセージ数の割合及び投稿数など12の特徴量を算出した.この結果を用いて日経平均VI指数の予測モデルをランダムフォレストによる機械学習を用いて構築した.またモデルの妥当性を検証するために日経平均オプションを用いたボラティリティトレーディングシミュレーションを開発している.シミュレーションではランダムトレーダと比較して大幅な収益改善が確認できている. 第二に,政治的コミュニケーションとしてのTwitterに着目し,大阪都構想の住民投票,東京都知事選挙,東京都議会議員選挙,横浜市長選挙を分析している.その結果,オピニオンリーダーの出現とアナウンスメント効果の成立の可能性を見出すことができた.また,Twitterのリツイートを分析するとTwitter上においては賛成派・反対派それぞれがグループを形成しており,その間のリツイートによるコミュニケーションは少ないことが分かった.つまりTwitterは意見改変の場ではなく,自分の意見を補強する場となっている可能性が考えられた. 第三にアンケート調査および構造モデリングを用いて,個人情報に関する利用者の態度を分析した.個人情報保護への関心と個人情報保護行動の関係を明らかにする.個人情報保護への関心がセキュリティ能力の自信及び対策の手間を厭わないという知識及び意識に影響を与え,これが個人情報保護行動を引き起こしているというモデルを構築して検証している.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
第一の株式市場とソーシャルメディアの関係においては,ヤフー株式会社との共同研究によりデータの分析を行っている.VI指数とヤフー株式掲示板の投稿メッセージの関係を分析している.2017年度はランダムフォレストによる予測モデルを開発し,日経平均オプションを用いたボラティリティトレーディングシミュレーションによる有効性検証を行った.その結果,モデルの有効性は確認できた.ただし,予測モデルの精度はそれほど高くない.2018年度は機械学習にディープラーニング等を導入することで予測精度の向上を目指す.2017年度は国際会議で研究成果を発表した.2018年度も分析結果の対外発表を行う予定である. 第二の政治的コミュニケーションにおけるソーシャルメディアとユーザモデルに関しては,2015年5月の大阪都構想における住民投票を題材の分析を国際会議で発表した.また学会誌への出版も計画している.また継続して他の選挙に対する分析も行ってゆく.結果は学会等で発表してゆく. 第三の個人情報保護に対するユーザモデルの構築に関しては,2017年度は個人情報を扱っている社会人に対してアンケートを実施し,この結果は分析中である.今年度は分析結果の対外発表も行ってゆく予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
第一の株式市場とソーシャルメディアの分析においては,最終年度である2018年度はモデルの完成を目指す.現在は機械学習としてランダムフォレストを使用している.しかし予測精度を向上させるために機械学習のロジックや特徴量の計算方法を見直す.また,特徴量の計算も機械学習に任せられる可能性のあるディープラーニングの適用可能性も検討してゆく.この結果は,2017年度に開発したボラティリティトレーディングシミュレーションを用いて検証してゆく.また,ボラティリティトレーディングシミュレーションの正確度を向上させるためにイントラデイ・データを使ったシミュレーションを開発してゆく. 第二の政治におけるTwitterのユーザモデル構築は,第一に大阪都構想の分析成果を論文として公表をするべく準備中である.ここでのリツイートによる社会ネットワークは,賛成派と反対派で別々のグループを形成していた.2017年度に分析した東京都知事選などの他の選挙でも同様の傾向が見られた.最終年度は社会ネットワークのクラスタを詳細に分析する計画である. 第三のユーザーアンケートによる情報保護行動についてのモデルは,本年度は2017年度に行った社会人に対してアンケート調査の結果を分析し,対外発表を行ってゆく予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
国際会議への投稿が遅れたことによる.次年度では10月に開催されるIEEE-System, Man and Cybernetics2018や12月にシアトル開催予定のthe 3rd International Workshop on Application of Big Data for Computational Social Scienceなどの国際会議を計画している.10月の国際会議の論文は現在投稿中である.このための出張旅費として使う.また分析作業のスピードを上げるために,ヤフー株式会社の株式掲示板データ解析を行う作業を学生アルバイトに行わせる.このための謝金に使用する予定である.
|