研究課題/領域番号 |
16K03822
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
中嶋 聖雄 早稲田大学, 国際学術院(アジア太平洋研究科), 准教授 (70734325)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 中国 / 映画 / 産業 / 経済社会学 / ネットワーク |
研究実績の概要 |
本研究は、中国映画の生産データ――どのスタジオが単独あるいは共同で映画を製作したか――に関するデータベースを作成し、ネットワーク分析の方法によって、スタジオ共同製作のネットワーク構造の変化・不変化を明らかにすることを目的としている。「新古典派経済学」によれば、現代中国におけるような市場移行期の生産ネットワークは、匿名の生産アクターによる一回性の「非繰り返し共同」(non-repeat collaboration)に向かうとされる。他方、経済社会学的アプローチは、市場経済における生産ネットワークも、社会的権力(例えば、国有スタジオに対する政策上の優遇)や過去の取引の惰性的継続のような社会構造に「埋め込まれており」、「繰り返し共同」のかたちをとった市場の「社会的構造化」が出現するものとみる。本研究は、上記二つの仮説の検証を行うことをめざしている。初年度である平成28年度は、まず、『中国電影年鑑』から入手可能な、過去約30年間に生産された中国映画の共同製作に関するデータベースを作成することをめざした。「改革・開放」初期の1980年代においても中国映画界においては、リスク分散のための(主に国内スタジオ間)共同製作が多く、特に過去20年間はほとんどが、香港・台湾・日本・韓国・アメリカ等、海外を含む複数スタジオ間の共同製作であるため、作成されるデータベースは、中国内外の映画スタジオをノードとした、複雑なネットワーク・データベースとなり、研究計画段階の予想以上に大規模なものとなった。まだ、データ・クリーニングなど、必要な作業は残っているが、本年度の主要な研究目的であるネットワーク・データベースの作成はほぼ達成された。来年度は、作成されたデータを用いたネットワーク分析と、フィールドワークに基づいた中国映画産業組織内人員へのインタビューを行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である平成28年度は、まず、『中国電影年鑑』から入手可能な、過去約30年間に生産された中国映画の共同製作に関するデータベースを作成することをめざした。「改革・開放」初期の1980年代においても中国映画界においては、リスク分散のための(主に国内スタジオ間)共同製作が多く、特に過去20年間はほとんどが、香港・台湾・日本・韓国・アメリカ等、海外を含む複数スタジオ間の共同製作であるため、作成されるデータベースは、中国内外の映画スタジオをノードとした、複雑なネットワーク・データベースとなり、研究計画段階の予想以上に大規模なものとなった。まだ、データ・クリーニングなど、必要な作業は残っているが、本年度の主要な研究目的であるネットワーク・データベースの作成はほぼ達成された。
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今後の研究の推進方策 |
1.計量的ネットワーク・データ分析 ネットワーク分析ソフトウェア(UCINET、Pajek、DyNet等)を利用することにより、さまざまなネットワーク変数(「密度」、「距離」、「中心性」など)を作成する。さらに、時系列データ分析(「イベント・ヒストリー分析」、「パネル・データ分析」など)を活用することによって、上記ネットワーク変数の時系列的変化を把握する。上記ネットワーク分析の結果から、新古典派経済学が主張するような「匿名アクター間の非繰り返し共同」が起こっているのか、または社会学的な「繰り返し共同」による「社会的構造化」が起こっているのか、あるいはまた両者が併存しているのか、を検証する。 2.中国産業組織内人員へのインタビュー 中国映画産業組織内人員へのインタビューを行い、上記で把握したネットワーク構造の歴史的変化・不変化をスタジオ経営当事者の視点から理解することをめざす。より具体的には、各省に点在する「16社映画製作所体制」のなかからいわゆる「三大映画製作所」と呼ばれる北京映画製作所、上海映画製作所、長春映画製作所(それぞれ在北京・上海・長春)に焦点を絞り、特にスタジオ間共同に関わる意思決定を行う人物(多くの場合は映画製作所長)および関連各部局(主にプロダクション部門)の人々へのインタビューを行い、各スタジオの組織戦略とネットワーク構造との関連を把握する。 3.当該時期(1979~2013年)における映画政策やマクロ経済指標の変化と照合 ネットワーク分析から明らかになったネットワーク構造の変化・不変化が、現代中国映画産業、さらには現代中国経済全般の歴史的変化(映画政策上の変化、マクロ経済指標の変化など)、またより広範な国際貿易体制の変化とどのように対応しているかを明らかにするため、質的な歴史的記述研究を再読し、質的・計量的分析の統合をめざす。
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