本研究は、企業について(1)組織部分特性が、IT投資水準と経営成果との関係に及ぼす影響、(2)IT投資水準と組織部分特性との関係、の二点について、大規模データベースの構築・分析を、専門家やサンプル企業への聞き取り調査に基づく定性的分析と組み合わせることにより、立体的に理解することを目的とした実証研究である。研究方法としては、(1)IT投資の成果を、組織・IT投資水準・経営成果の3変数群の関係と捉える枠組、(2)『経済センサス』データと『情報処理実態調査』データを組み合わせて分析する方法論、の2点が国内の他研究と比較して大きな特色であった。 研究計画でも『情報処理実態調査』と『経済センサス』データの名寄せが最大のリスクであると指摘していたが、29年度・30年度の作業を通じてこのことを確認した。そこで、31年度の春に、大学と商工リサーチの提携の企画が生まれたことから、経営成果データとしては商工リサーチデータを使用する方向に転換した。しかしながら、この提携は事務的な事情(と聞いている)で大幅に遅れ、本研究終了時に未だデータ入手が出来ていないという事態になった。 今年度は、商工リサーチデータを待っている間に、新たに平成24-29年度「情報処理実態調査」データを入手し、分析を進めた。データの取り方からパネルデータとして使うのは難しく、主としてプールして約2000件のクロスセクションデータとして使うこととした。この2000件に対して組織特性アンケートを実施して110社から有効回答を得た。これらデータを使って、組織特性とIT投資との関係を分析した。結果は、経営情報学会の2020年秋大会で発表予定である。 この他に関連テーマとしての職場におけるウェルビーイングの実証研究および研究組織の組織特性研究は、それぞれ研究集会において報告した。
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