最終年度の研究テーマは「日韓台韓の半導体企業における特許の使い方」の定式化であった。主としてUSPTO(米国特許庁)やNBER(全米経済研究所)より収集したデータを使って、米国と日本における半導体特許の引用と被引用との関係性をテストした。その結果、米国企業は他から引用される特許数が日本企業に比べて多く、製品開発や今後の研究のための発明で特許の重要性が高いことが判った。このことについて『半導体企業の組織構造,知財戦略および競争力』同文館出版で一部成果として公表したが、さらなる学術的な内容公表はこれからである。 フィールドワークとして、台湾とシンガポールのJETROやベンチャー企業経営者との面談を行った。まず、台湾でTSMC社の新竹Fab見学や資料収集を行った。なかでも日本台湾交流協会から資料はこれからの研究で活用してゆく。次に、シンガポール経営大学での研究者交流やJETROでのブリーフィングでは,国の制度やベンチャー企業の支援体制、シンガポール国税制などについて多くの知見を得ることができた。JETROからの提供資料や数社ベンチャー企業の決算書、内部資料を収集した。また、シンガポール政府Webから知的財産に関する資料やデータを入手したことは,日本の半導体研究開発や応用技術に活用できる。さらに、日本での調査研究として,日本半導体装置協会を約5カ月おきに訪問,最新の半導体,半導体装置に関するデータと情報,さらに専務理事との懇談,インタビューを行った。 アジアの半導体企業の分析を理論的な側面から実施したが、仮説-検証の基づく理論化は実証データと実証プロセスが道半ばということもあり、もう暫く研究を進めなくてはならない。理論的な裏づけに基づき日本の半導体企業の再生事業に結び付けたい。
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