平成30年度は、平成28年度・29年度の研究において示唆されたことを踏まえつつ、今までと同様に文献調査と企業へのインタビュー調査を中心に実施した。その際に、「SCM関連部門とマーケティング関連部門の統合性」に関して、これらの部門間がどのような関係性にあるのかについて焦点を当てた。 まず文献調査については、新たにマーケティング関連及びマーチャンダイジング関連の文献調査を実施し、インタビュー調査に向けての概念枠組みを整理した。そしてその概念枠組みを踏まえつつ、平成28年度・29年度においてインタビュー対象であった企業8社(製造業者4社、流通業者4社)のうち、4社(製造業者2社、流通業者2社)に絞り込んだインタビュー調査を実施した。これらの調査結果をもとに、個々の事例および事例間の分析を行ない、SCM関連部門とマーケティング関連部門の統合性について考察した。具体的には、本研究における主テーマであった「業界別・主導権別のSCMのシステム特性」を明らかにすることに関して、SCM関連部門とマーケティング関連部門間の関係性を説明するための分析枠組みを提示することができた。 以上の取り組みにより示唆されたことは次の点である。実務界においては、SCM機能とマーケティング機能との相互作用がうまくいかず、マネジメントの弊害が起きているケースがある。さらに経営学分野においても、SCMもしくはマーケティングのどちらか一方に焦点を当てた研究は多く存在するが、両者の統合的視点についてはやや希薄である。そこで今後の課題として、①SCMとマーケティングの非統合的視点は、どのような点で不具合が生じているのか、②SCMとマーケティングの統合的視点は、どのような点で意義があるのか、③SCMとマーケティングの統合的視点は、どのような方向で発展させることが必要か、ということを明らかにしていくことの重要性が示唆される。
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