| 研究課題/領域番号 |
16K03838
|
|---|
| 研究機関 | 関西学院大学 |
|---|
研究代表者 |
岡村 秀夫 関西学院大学, 商学部, 教授 (70319606)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
| キーワード | IPO / 新規公開 / マザーズ / ジャスダック / 新興市場 |
|---|
| 研究実績の概要 |
本年度の研究では、新規公開株の初期収益率の計測、ならびに企業属性と新規公開株の価格形成について、主に新規公開時の企業規模と公開後の株式時価総額の関連を分析した。
具体的には、まず初期収益率の計測をした上で、分布状況を確認した。次いで、公開価格に基づく時価総額を基準にして、公開後1年から5年の時価総額の推移を市場別に分析した。その結果、新規性・成長性に富む企業が相対的に多い東証マザーズ市場において、企業規模が小さいサンプル（公開時の時価総額50億円未満）に関しては、公開後1年～4年の期間について新規公開時を上回る時価総額となった企業が過半であった。一方、企業規模が大きいサンプル（同、300億円以上）に関しては、全期間について新規公開時を下回る企業が過半を占めていた。なお、マザーズに次いでIPO件数の多い東証ジャスダック市場に関しても、おおむね同様の結果が得られた。
上記の結果から、企業年齢・創業者年齢が相対的に若い小規模企業群の成長性が高いことが示唆される。加えて、小規模企業群においてはIPOによる資金調達環境改善の効果が顕著に表れている可能性も指摘できる。新興市場に関しては、本則市場に比べて質の悪化等の問題点も指摘されていたが、上記の意味で「小さく産んで大きく育てる」ことができているとするなら、マザーズを始めとする新興市場創設の目的は一定程度達成されたとも考えられる。ただし、米国における市場間競争や特徴の異なる市場の併存ではなく、東証一部を目指す通過点としての新興市場となっている可能性に留意する必要がある。
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規公開株の初期収益率、公開後の株価パフォーマンス等についての計測、データセット作成は完了しており、企業規模や上場先市場をはじめとする様々な企業属性を切り口とした分析を実施中である。なお、本年度に実施予定であった株式所有の分散度と初期収益率の関係の分析は平成29年度に実施することとしたが、代わりに平成29年度に実施予定であった株主属性をふまえた分析を本年度に実施した。
その結果、【研究実績の概要】で記載したように、企業規模と市場を切り口とした分析が新規公開株の価格形成に与える要因を明らかにする上で有効であり、株式所有の分散度や流動性と価格形成の関係についての分析など、残りの計画をより効率的に実施する上でも有用な結果が得られたと考えている。
|
| 今後の研究の推進方策 |
今後の研究を推進する上で、平成28年度の研究から、新規公開株の価格形成に影響を与え得る企業属性を可能であれば事前に把握しておく必要性が示された。そこで、新規公開企業の株式所有構造や新規公開株の流動性が新規公開株の価格形成に与える影響を明らかにする上で、コントロールすべき要因を事前に把握するために、必要に応じて研究実施計画に示した主な項目の順序を適宜入れ替えて研究を進める予定である。
なお、当初使用を予定していたデータベースのうち、一部については業者が提供を取りやめたものがあるが、代替データベースの利用、文献調査、その他の情報収集、研究補助者による支援等を通じて、研究計画全体に大きな影響が及ばないように留意する。
|
| 次年度使用額が生じた理由 |
研究実施計画のうち、効率的な研究計画の推進を考慮し、一部項目の実施順序を入れ替えたため、計量分析用ソフトウェア、デスクトップPC、データベースの購入を延期したため、次年度使用額が発生した。
|
| 次年度使用額の使用計画 |
上記理由をふまえ、計量分析用ソフトウェア、デスクトップPC、データベース等の購入をはじめとして、情報収集旅費、研究補助者への謝金等について、次年度使用額と平成29年度分を合わせて効率的に使用する計画である。
|
