研究課題/領域番号 |
16K03843
|
研究機関 | 宇部工業高等専門学校 |
研究代表者 |
松野 成悟 宇部工業高等専門学校, 経営情報学科, 教授 (30290795)
|
研究分担者 |
内田 保雄 宇部工業高等専門学校, 経営情報学科, 教授 (70321487)
伊藤 孝夫 広島大学, 工学研究科, 特任教授 (00280264)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 経営学 / 経営情報 / アウトソーシング / 情報サービス産業 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、クラウド時代における情報システム(IS)のアウトソーシング戦略の最適化を可能にする新たなフレームワークを構築することにある。また同時に、わが国情報サービス産業のビジネスモデル革新に向けた提言を行うことも企図する。そのため、クラウド・コンピューティングの進展が企業のISアウトソーシング戦略に与える影響を理論的・実証的に明らかにし、既存の諸理論を統合するロバストなフレームワークを開発するとともに、情報サービス産業のビジネスモデル革新に有用な理論的基盤の確立と具体的なアクションに結び付く実践的な知見の獲得をめざす。 本研究の2年目となる平成29年度は、前年度から引き続き情報サービス産業の現状と課題を分析するとともに、ISアウトソーシングに関する先行研究ならびに最新の動向などを調査した。また、ISアウトソーシングとオープン・イノベーションとの関係についても考察した。 わが国における情報サービス産業は、クラウド・コンピューティングの進展により受注開発中心型の産業構造の変革が求められている状況にある。そのため、ここではデータが入手可能であった情報通信業における多角化の進行と経営成果(財務パフォーマンス)との関係を分析した。具体的には、日経NEEDSデータベースをもとにエントロピー指数の観点から分析したところ、1999年から2008年までの10年間では、その各年度においてエントロピー指数と従業員一人当たり売上高との間に有意な正の相関がほぼ存在していたが、ROAなどの指標との間には明確な関係は認められなかった。一方、2004年からの5年間で多角化が進行した企業では、ROAが有意に低下したことが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成29年度の到達目標は、ISアウトソーシング戦略の最適化を可能にする新たなフレームワークの開発・構築であり、前年度からの進捗が遅れていた仮説構築作業や質問票調査の企画・設計作業ならびにその実施に取り組む予定であった。しかしながら、クラウド・コンピューティングの進展が(1)情報サービス産業の業界構造に与える影響の解明と課題の抽出、および(2)企業におけるISアウトソーシング戦略に与える影響の解明と課題の抽出に多くの時間を要したため、当初の計画どおりの進捗を得ることができなかった。 また、ISアウトソーシングとクラウド・コンピューティングとの関連を調査・分析するなかで、オープン・イノベーションなどとの関係についても併せて検討していく必要が生じたため、慎重を期して研究を進めることにしたことも進捗が遅れた一因である。これらの理由から、本研究課題の進捗状況は今年度の研究計画に照らし合わせて「遅れている」と判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
当初、本研究課題の最終年度となる次年度の到達目標は、今年度までに得られた研究成果をもとにして、情報サービス産業のビジネスモデル革新へ向けた提言に必要な理論的基盤や実践的な知見を導出することであった。しかしながら、研究の進捗状況に遅れが生じたため、前年度からの持ち越し課題であるISアウトソーシング戦略の最適化を可能にする新たなフレームワークの開発・構築作業を急ぐことにする。具体的には、進捗が遅れている仮説構築作業や質問票調査の企画・設計作業に鋭意取り組み、次年度の前半には質問票調査を実施したい。仮説モデルにはTCE(取引コスト経済学)とRBV(資源ベース企業観)の複合的なフレームワークをベースとしながらも、ISアウトソーシングの形態やクラウド・コンピューティングの影響などの諸要因を追加することや、成果変数の導入、さらには構成概念の妥当性の包括的な精査などを予定している。 そして次年度後半には、情報サービス産業のビジネスモデル革新へ向けた提言に必要な理論的基盤や実践的な知見の導出をめざす。以上の研究を推進するために、引き続き研究代表者および2名の研究分担者との緊密な連携を図るものとする。 なお、今年度に企業間関係論の視座からISアウトソーシングの現状と課題を分析するなかで、オープン・イノベーションとの関係についての考察が深められたため、研究協力者(本校学生)による国際会議での成果発表を次年度中に予定している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの進捗状況」の項で述べたように、情報サービス産業の特徴や動向を把握・分析する作業や、国内外の主要な文献のサーベイと先行研究のレビューに多くの時間を要したため、当初の計画どおりの進捗を得ることができなかった。そのために、今年度の助成金に多くの未使用額が生じた。 費目別収支状況では、特に人件費・謝金の支出が予算に対して過少であったため、今後は研究資料の整理等の作業において、さらに柔軟かつ積極的に研究協力者からの支援を受けることにしたい。 次年度の研究費の使用計画は、以下に示すように大きく4つの項目を予定している。すなわち、(1)今年度に引き続きISアウトソーシングに関する図書や資料(電子データを含む)の購入や有料データベースの利用、(2)企業へのインタビューや質問票調査の実施に係わる謝金や旅費、郵送料等、(3)データ解析や統計的モデリングに必要なPCや周辺機器類、パッケージ・ソフトウェア等の購入、(4)本研究で得られた成果を国内外の学会等で発表し、また学術誌へ投稿するために必要な学会参加費や旅費、そして論文投稿料などである。なお、研究協力者(本校学生)にも研究成果を適宜国際会議で発表してもらう予定である。
|