研究実績の概要 |
本研究の目的は,コンテンツビジネスにおけるグローバル・シナジーを生み出すための事業システムを解明することである.具体的には,日本のコンテンツの中で国際競争力をもつマンガビジネス(作品を軸に連動するコミックとアニメ,キャラクター商品などの事業)を対象に,これらの事業間関係からどのようにグローバルなシナジーが生み出されるのかを明らかにすることである.研究期間の前半では(1)コンテンツの制作や流通のデジタル化に伴う事業システムの変革を解明し,後半では(2)進出国市場の多様性に適応しながら,国際間の事業間調整を行う事業システムが生み出すグローバル・シナジーのメカニズムを明らかにする予定である. 平成29年度は,コミックとアニメの国際展開に関する調査を行った.コミックやそこから派生するキャラクター商品事業を展開する日本の大手出版社は,欧米とタイに対して積極的な事業展開を行っており,各国での事業展開が複数の出版社(一部,小売業も含む)によるアライアンスであることが明らかになった.具体的には,資本関係のある出版社2社が子会社を設立している米国,この米国子会社が,日本のコンテンツを販売していた欧州企業を買収し子会社化して事業展開を行うフランスとドイツ,日本の大手出版社4社とコンテンツ関連の小売業が合弁会社を設立したタイというように,アライアンスによる事業展開のパターンも,国よって異なっている.このように,海外における日本のマンガ関連の事業が,作品を軸に1業種1社で構成されたチームで展開される国内事業とは異なり,複数企業のアライアンスで展開されていることは,シナジーを生み出す仕組みが国内外で異なっているという発見事実である.
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