研究課題/領域番号 |
16K03849
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
佐野 享子 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 准教授 (10334020)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 新事業創造 / マーケター / 熟達 / 洞察 |
研究実績の概要 |
今日の日本企業では、新製品・新サービス・新事業の開発(以下新事業創造という)が最重要課題であると認識されている。企業における新事業創造、すなわち顧客に対して新たな価値を創造する活動はマーケティングに該当する。本研究は、熱達したマーケターが価値創造の際に生成している実践知がいかなるものであり、いかにしてそれらの実践知が生成されているのかを実証的に解明することを目的とする。具体的には、新事業創造の出発点となる 「コンセプトの創造」に焦点を当て、新事業創造におけるコンセプト創造の段階で、マーケティングの熟達者と非熟達者の発想や思考がどのように異なるのか比較することを通じて、効果的な価値創造の手法と優れたマーケターを育成する方法に対する有益な手がかりを得ることをめざすものである。 今年度は、はじめに先行研究の検討を行い、本研究における分析モデルについて考察した。例えば近年注目されている概念としてSarasvathy(2008)が提唱した「エフェクチュエーション」があるが、係る理論モデルに従った思考プロセスが看取されるマーケターであっても、新事業創造のための機会を創出するプロセスにおいては、熟達者特有のinsight(洞察)が随所で発揮されていることが予想されることから、それらの特質を探ることを本研究におけるリサーチクエスチョンに定めた。 次いで、新事業創造に携わり、かつそれらの取り組みが社会的にも評価されているマーケターの事例について検討を加えた。今年度は「オープン・イノベーションで切り拓く革新的新事業創出」と題した産学連携学会主催の2016年度シンポジウムで事例報告を行った2大学、及び「新たな価値創造のためのマーケティング」と題した2017マーケティング総合大会で事例報告を行った2企業の事例について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度が最終年度である別の科研のとりまとめに時間がとられて、本科研の今年度の成果のとりまとめを十分に行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度実施した事例研究について更なる考察を深めるとともに、本研究の課題解決に資する新たな事例についても探索し、研究への協力依頼をしていきたい。 具体的には、熟達したマーケターを対象とした事例研究を追加するとともに、非熟達者についても協力を求めて事例研究を行い、熟達者との比較を行っていきたい。研究方法としてはEisenhart(1989)による理論産出型のアプローチにより、理論的飽和が見られるまで事例を追加して分析することをめざしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究のテーマに沿った研究会やシンポジウム等が都内で頻繁に開催されたことから、本研究の課題解明に資する事例の情報収集等について、遠隔地への旅費を支出することなく、効果的・効率的に進めることができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
新たな事例を追加して事例研究を行うために、遠隔地に所在する企業・大学についても候補に入れて、本研究の課題解明に相応しい事例の選定を行いたい。また研究成果の中間とりまとめを行うこととし、遠隔地で開催される学会発表の旅費として経費を支出したい。
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