今年度は、大学教員が主体となって開発した創造的な商品の開発プロセスに焦点を当て、それら商品開発のアイデアがいかなる契機で創出されたのか探索することを通じて、大学においてイノベーティブな商品の開発を行った人々の思考の特質に迫ることとした。 具体的には、創造的な商品が開発されたと考えられる事例として、ラテラル・マーケティングの特徴が看取される事例の商品開発プロセスを分析したところ、次の点が明らかになった。 第1に商品開発のプロセスとして3つのタイプが分類された。具体的には、商品開発の初期段階に研究成果の創出段階が位置づけられる「研究成果創出起点型」、社会のニーズへの専門性応用の希求が商品開発プロセスの起点に位置づけられる「社会ニーズへの応用希求起点型」、ニーズの気づきが商品開発プロセスの起点に位置づけられる「ニーズの気づき起点型」の3タイプである。 第2に、商品開発のプロセスにおいては、企業における商品開発プロセスで見られる段階と類似した段階が存在した。研究成果の実用化の方向性の意図的な探索やサラスパシーが提唱するエフェクチュエーション的思考法がそれである。 第3に、大学教員が創造的な商品を開発する際には、アイデアが偶発的に創出するのを待つのではなく、社会のニーズへの専門性の応用や研究成果実用化の視点から意図的な探索・検討を行うこと、問題意識を持つ人々との意図的なディスカッションを行うこと、目の前に存在する人々の生活を追体験し、彼ら彼女らの抱える課題を自分の課題として理解・共感するといったオブザベーションを意図的に行うことが、商品開発のアイデアを創発する思考を誘発する上で効果的であると示唆された。
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