研究課題/領域番号 |
16K03854
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
延岡 健太郎 一橋大学, 大学院商学研究科, 教授 (90263409)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | SEDAモデル / 意味的価値 / 統合的価値 / アート / デザイン |
研究実績の概要 |
申請時の研究計画において、平成29年度は「理論的なモデル構築と詳細事例研究の実施」を掲げていたが、計画通り、それら2点に関する研究を実施した。 理論的なモデル構築では、平成28年度に理論創出を開始したSEDAモデル(Science, Engineering, Design, Art)の洗練化を実現するために、多様な媒体を使って公表した。具体的には平成27年度のモデルから更に発展させたSEDAモデルをフィーチャーした論文を「調査月報」(日本政策金融公庫)に掲載しただけでなく、企業経営や政策策定に関わる人たちにも広く読んでもらえる媒体(「経理情報(2017年11月1日号)」「日経ビジネス(2018年1月15日号)」「ダイヤモンドクォータリー(2018年春号)」など)で発表し、積極的にフィードバックを得た。更には、経済産業省が発行する「平成27年度ものづくり基盤技術の振興施策」(ものづくり白書)にも掲載され(P108)、日本製造業への方向性として重要である点を認知されると共に、多くの有益なコメントを得ることができた。 詳細事例研究では、サイエンス、エンジニアリング、デザインを高度に統合した顧客価値を実現しているアイロボット社(お掃除ロボットのルンバ)の協力を得て、複数回にわたる聞き取り調査を通じて、ビジネスケースを執筆し、一橋ビジネスレビューに掲載した。MITのAIに関わる看板教授が提唱した革新技術を、高度なエンジニアリングで商品化し、顧客が使いやすいデザインを実現したSEDAモデルの成功事例である。 加えて、組織学会では定例会として個人講演会に招待され、「統合的な価値づくり -デザインエンジニアリングとアート思考-」を発表することにより、経営学の学会でもSEDAモデルが認知され、理論的な貢献ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度および平成29年度の「研究実績の概要」でも説明しているように、研究計画で掲げた目標に向けておおむね順調に進展させることができている。研究課題である「統合的価値づくりにおけるデザインエンジニアリングの役割」に関して、理論的なモデル構築と詳細事例研究の実施が本研究では求められているが、それぞれ具体的な研究結果が出ている。 特に、理論的なモデル開発では、1年目の平成28年度には「SEDAモデル」の創出ができ、平成29年度では、更なる発展を実現した。企業の研究に関しても、事例研究という形で調査研究が進み、ジャーナルへの掲載も実現できている。
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今後の研究の推進方策 |
理論的なモデル構築として、ポテンシャルの高いSEDAモデルの創出を行ったので、その進展と深掘りを今後更に進めていく。SEDAモデルは研究計画で想定していた理論を複雑性という点で大きく超えた概念なので、調査手法に多少の修正を行う。つまり、Engineeringだけでなく、Science、Design、Artなどを含んだ複雑な概念なので、大量サンプルによる質問票調査の方法論として、当初の研究計画よりも、比較的に少ないサンプルで、個別事例に関してより深い調査研究を進め、定性分析を重視した方向に多少の修正を考えたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、申請書の中で、平成29年度に計画していたマツダの事例研究に変え、アイロボット社の事例研究を優先することにしたため、3回予定していたマツダがある広島への出張、および、米国のマツダへの出張を取りやめたために、旅費が計画より大幅に縮小されたためである。平成29年度ではなく、平成30年度にマツダの研究を実施するので、使わなかった旅費を使用する計画である。
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