研究課題/領域番号 |
16K03854
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
延岡 健太郎 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (90263409)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | SEDAモデル / 意味的価値 / Gogoro / 顧客価値 / アート / デザイン |
研究実績の概要 |
研究実施計画通り、2018年度は定性的および定量的な実証研究を実施した。これまでに構築してきた独自の理論モデルである「SEDAモデル」(Science、Engineering、Design、Artを統合した顧客価値の概念フレームワーク)をベースにした実証研究である。 定性的研究としては、第一に、引き続きマツダ株式会社の「アート思考」に関して聞き取り調査を継続している。アート思考に関しては、すでに、本科研プロジェクトの成果として2016年に「マツダデザイン:Car as Art」をパブリッシュした。18年度も引き続き、研究を継続し、本科研プロジェクトが終了するまでには、著書の出版を予定している(日本経済新聞出版社)。第二としては、台湾のホレイス・ルークというSEDA人財が起こしたイノベーションである電動スクーターの「Gogoro」を研究し、論文を出版した。デザイナーの教育を受け、環境改善の哲学を持ち、革新的な電池交換技術を、使いやすい商品で実現し、SEDAモデルの顧客価値を象徴する成功である。 定量的研究としては、自動車の意味的価値について、日本、米国、中国、ドイツの4カ国の顧客アンケート調査結果を入手し、マツダのマネージャと共同研究を実施した。自動車はSEDAモデルの顧客価値が特に重要な商品分野である。移動手段としての自動車(機能的価値)に対して、SEDAモデルを反映した意味的価値としては、「走る喜び」「使う楽しみ」「持つときめき」の3項目で分析した。4市場共に意味的価値の重要性は過去10年間で高まっており、SEDAモデルの重要性が検証された。また、ドイツは走る喜び、米国は使う楽しみ、日本は持つときめき、を他市場よりも重視する点も新たに明らかになった。 このように、18年度については、計画通り、SEDAモデルの実証研究を順調に進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で説明したように、本研究の課題である「統合的価値づくりにおけるデザインエンジニアリングの役割」に関して概ね順調に進展させることができている。ある分野では、期待以上に質の高い成果がうまれている。特に、意味的価値やデザインエンジニアリングを更に深く考える上で、SEDAモデル(Science、Engineering、Design、Art)が提案できた点については期待以上の実績だと考える。18年度は、その概念に関して、定性的にも定量的にも、実証的な研究を実施し、論文としてパブリッシュもしたので、十分な成果をあげていると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
本科研プロジェクトは、2019年が最終年度である。これまでに、SEDAモデルに関して、理論構築を実施してきた上で、実証研究も順調に実施しパブリッシュしてきた。最終年度は、更に強力に、社会へ貢献するために、著書の執筆を最優先して研究を進めたい。著書は、SEDAモデルにとって特に重要な「アート思考」に焦点を当てる。現在まで「デザイン思考」が世界に広まってきたが、日本のものづくりがもう一度世界を牽引する地位を得るためには、それだけでは十分ではなく、アート思考の考えが必要となる。 日本経済新聞出版社とは、調整済みで、遅くとも2019年度末までに、出版する計画になっている。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会発表用のMacBookの最新モデルの発売が遅れたため購入を遅らせたのが理由である。 本研究成果を発表するためにMacBookを購入する。また、発表のための、国内外出張に使用する。
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