2023年度においては、次に挙げる3つの研究活動を主に進めた。まず第一に、ビジネスモデルの動態的展開に関する定性分析を進めた。具体的には、新たな酸化ガリウムを用いたパワー半導体デバイスの開発を進める企業への取材調査を重ね、その成長過程に関する執筆を行ない、誌面にて発表した。調査の結果、大学の知を活かしつつ、企業自らの独自施策や創意工夫を相乗的に重ねることによって、開発活動のみならず独自のビジネスモデル展開を遂げていることが明らかになった。同時に、ビジネスモデルの創出と更新プロセスにおいて、経営者が果たす役割についても明らかとなった。続いて第二に、新たな分析対象事例を抽出すべく、幅広く探索活動を進めた。特に新たな取り組みを進める可能性の高い新興企業に注目し、創業の背景や創業後の事業展開、そしてビジネスモデルに至るまで多様な点に関する取材を実施した。この取材結果についても、対象企業の内容確認を経た上で、誌面において発表した。さらに第三に、ビジネスモデルの動態的展開に関する書籍・論文の執筆を進めた。今後の研究の展開として、これらの発表を計画し、進めているところである。 研究期間は、新型コロナウィルス感染症の蔓延に伴う活動制約の影響を受けたため、全体として2016年度から2023年度までを要することとなったが、その間、各種企業におけるイノベーション活動とその過程における消耗品などビジネスモデルの動態的展開を扱った和書・洋書を刊行したり関連する事例を誌面発表することができた。加えて、新たな事例探索活動の一環として行なった取材についても、18本を誌面発表することができた。研究期間中に刊行した和書については、幸いなことにエコノミスト賞を受賞することもでき、その成果を第三者機関にも認められるところとなった。
|