研究課題/領域番号 |
16K03859
|
研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
西中 美和 総合研究大学院大学, 学融合推進センター, 特任准教授 (70770741)
|
研究分担者 |
白肌 邦生 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (60550225)
神田 陽治 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (80417261)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | イノベーション思考 / 価値共創 / 相互作用 / リーダーシップ / 集団機能 / グループワーク |
研究実績の概要 |
本研究の目的は「時間軸視点」と「存在論的視点」の切替によるイノベーション思考形成の初期段階における形成過程を説明する概念モデルの構築である。これはイノベーション人材育成方法論開発のための基盤となる。研究戦略として事例研究を採用した。思考形成の初期段階が研究対象であるため、イノベーションシーズがあり思考の基礎が形成される時期である大学院大学を研究対象とする。28年度においては、事例とすべき実験的なワークショップ授業を2016年12月から2017年1月にかけて実施しデータを収集した。実験的ワークショップ授業においては、時間軸では「将来から考えるというバックキャスティング型の視点」、存在論的な軸では「異なる立場で考えるという視点」の切り替えを意図的に条件として設定している。具体的には、ある農村地帯を行政区域とする市の将来を考える政策立案的な戦略ロードマップを作成する「戦略ロードマッピング」という試行授業を実施した。12名の被験者に対する事前調査で得たデータに統計分析を行うことで3形態の集団構造に基づく6チームを構成し戦略ロードマップを作成させた。ロードマップの横軸に時間軸をとりバックキャスティングを実施させ、グループワークにより異なる立場からの視点を意図的に創出した。定性的・定量的手法により観察およびアンケート調査を実施し、分析用のデータを収集した。ワークショップ構成員の相互作用によるイノベーティブな知識の共創過程を、収集データより分析した。その結果から、自然発生的な役割の動的な発生と遷移が適切に機能している場合にイノベーティブな考えが生まれ、それが状況に応じた役割の変遷によって深化した場合に、ある一定レベル以上のイノベーション思考が形成されるという仮説を導出した。ここまでの内容をプロジェクトマネジメント学会および第7回知識共創フォーラムで発表している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
28年度の目標は、データ収集・分析および仮説の導出を行うことである。データは収集し、分析を開始しており、概念的モデルの構築に向けておおむね順調に進んでいる。28年度前半においては、実験的ワークショップ授業を事例として採択することを決定し、ワークショップ実施計画を作成した。具体的には、戦略ロードマッピング演習という試行授業を大学院大学で実施し、ある市の政策戦略ロードマップを作成するというものである。先行研究等より「時間軸視点」と「存在論的視点」の授業への取り込み方を検討し、ワークショップ・チームを構成するために事前調査を実施し、その結果の統計分析からチームを構成した。ワークショップで用いるケース、およびテンプレートや教材等を作成・準備、要員を確保し、また、シナリオと詳細計画を策定した。実験的ワークショップ授業は2016年12月から2017年1月にかけて実施した。データ収集方法としては、定性的・定量的手法を併用した。ワークショップはビデオ録画し、採録した音声はスクリプトに書き起こした。また、事後アンケートを実施し、ワークショップの内容およびアウトプットとしてのロードマップに対する被験者の自己評価を取得した。アウトプットは教員による評価も行った。収集したデータは定性的・定量的分析を行い、仮説を導出した。29年度は、分析と考察をさらに進め仮説の確認を行い、概念モデルの構築を開始し、30年度には完成をめざす予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
29年度は収集したデータの分析と考察をさらに進め、概念モデルの構築を開始する。28年度に導出した仮説の確認を進め、必要に応じて追加の調査を行う。多角的な視点から分析と考察を行うために、共同研究者とディスカッションしながら進め、概念モデル構築に結び付けてゆく。初期段階の概念モデルが構築できた段階で成果の学会発表を行う予定である。29年度は2回ないし3回の学会発表を予定している。また、ジャーナル紙投稿のための論文の執筆を始める。外部に発表することで、迅速な研究成果のフィードバックによる貢献を行い、また、外部の意見を取り入れることで、さらに研究内容を充実したものにしてゆく。29年度後半においては、最終的な概念モデルの構築を始め、必要に応じてモデルの確認のための追試的な実験等を行い、概念モデルのブラッシュアップを図る予定である。30年度においては、全体的なまとめと概念モデルの完成を行う。29年度後半から30年度にかけて最終的な概念モデルが構築され、全体がまとまった段階で国際学会での発表およびジャーナル投稿による社会へのフィードバックを予定している。当研究は、イノベーション人材育成方法論開発のための基盤となる概念モデルの構築を目的としているため、最終的な概念モデルが完成する段階で、次の発展的ステップを見据え、イノベーション人材育成方法論開発のために、構築した概念モデルをいかに活用するかの研究の土台を築くところまで進めてゆくことを目標とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
書籍の購入において、図書館に所蔵があるものは規定により購入できず、図書館から貸与したため物品費が予定よりも10万円低くなった。また、定性分析用ソフトウェアを購入予定であったが、フリーウェアで同等の性能のソフトウェアが開発・発表されたため、そのソフトウェアを使用することとし、予定していたソフトウェアを購入しなかった。そのため、「その他」費用が予定より16万円低くなった。当初はデータ収集としてのインタビューの謝金を計上していたが、実験的授業の実施による研究データ収集となったため、この費用が10万円低くなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
29年度においては、研究成果が出始めるため積極的な学会発表による社会への貢献を予定しており、学会参加費および旅費に使用予定である。また、石川県の共同研究者とのコミュニケーションによる研究深化を図るために出張旅費としても使用予定である。
|