研究計画通り、海外の大学に在籍する研究者の協力を得て、欧州にある多国籍企業本社や生産拠点を訪問し、聞き取り調査を行った。3年間に渡る文献レビュー及び研究調査に基づき、国内外の学会(2018年8月韓国で開催された国際学会APMS、9月日本で開催されたアジア経営学会)で研究報告を行った。それらの研究報告を踏まえ、研究で取りあげる問題を明確にして、そこで明らかになった問題点を整理し、さらに企業での追加インタビュー調査を行った。それに並行にして、海外研究協力者と研究の打ち合わせを行い、研究で取りあげる問題を明確にして、そこで明らかになった問題点を整理し、比較分析を行い、まとめる作業を進めた。その中から研究成果を1つ紹介する。 米国系多国籍企業を対象にした事例研究では、中国で設置したグローバル調達拠点(IPO)に焦点を当て、そのIPOの展開プロセスを整理し、米国本社-中国IPOとの拠点間関係と調達の仕組み、拠点の役割、及びその役割の変化を明らかにし、役割の拡大と変化を可能にした要因と、そこから得られる示唆について考察した。同社の中国IPOは、ただ単に本社から指定された部品を購買・調達する拠点として機能するだけではなく、グループ全体のコスト削減を図るため、本社の調達センターや世界各地に分散する生産拠点、中国にある技術センターなど、数多くの拠点と連携しながら中国における調達の拡大に積極的に取り組み、拠点が担う役割の拡張・転換を図ることができた。こうして中国IPOは次第に全社の調達購買戦略に参画し、企業グループ内での存在感を高め、新たな生産拠点の中国シフトを後押しすることになり、本国本社の対中投資も促進された。つまり、企業間・企業内における拠点間の連携はIPOの役割進化とグローバル調達を促進することを示唆することを明らかにした。
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