研究課題/領域番号 |
16K03866
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
青木 宏之 香川大学, 経済学部, 教授 (00508723)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 人事部の役割 / 請負関係 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、主に以下の2つの論点についての調査・研究を行い、その成果を発表した。 第一に、人事部門の役割の戦後史についての研究である。異動の問題を考察するには、その意思決定において重要な役割を果たしている人事部門についての分析が欠かせない。「個別人事における人事部門の役割―戦後史研究の視点から」(『日本労働研究雑誌』2018年)においては、高度成長期の過程において人事部が社内における異動あるいは関係会社への出向・転籍に関する権限を強めていく過程を明らかにした。また、人事部門によるラインへの発言力の源泉がその情報力にあり、その情報を収集する具体的方法などについても事例調査を通じて明らかにした。ここでは主に元日本鋼管の人事部長への聞き取りと同社に関する一次資料を収集し、そのミクロ的分析を行った。 第二に、請負会社関係についてである。日本企業は、「企業グループ」あるいは「系列」などのと表現されるように、人の異動や長期相対取引を通じて他企業と密接な関係を構築している。大手製鉄メーカーは多くの請負会社を持つことで知られており、請負会社に対して、現場レベル、そして経営者レベルで、人材を送っている。"A Comparison of Subcontracting Work between Japanese Electrical Machinery and Steel Industries", [産業関係研究, 2019] では、そうした鉄鋼業の請負関係の形成過程を明らかにした。また、電機産業の請負関係との対比も行い、電機産業では、今後短期間でそうした請負関係を形成することが困難であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、それらを通じて日本企業における社内外の異動に関する諸論点の検討を行った。2つの論説を公刊し、一つの学会発表を行うことができ、順調に研究成果をあげたと言える。その内容は下記のとおりである。 論説の一つ目は「個別人事における人事部門の役割―戦後史研究の視点から」(『日本労働研究雑誌』698号、2018年)である。ここでは、異動やその前提となる人事評価などのいわゆる個別人事に関する人事部門の権限について明らかにした。 論説の二つ目は、"A Comparison of Subcontracting Work between Japanese Electrical Machinery and Steel Industries", [産業関係研究, No.29-1, 2019] である。ここでは、鉄鋼大手メーカーで見られるような、人材の異動を頻繁に行う密接な関連会社関係がいかなる歴史的プロセスを経て構築されたのかを明らかにした。 学会発表の内容は、二つ目の論説に対応している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は企業間関係について研究を重ねていく予定である。 日本企業における異動を明らかにするうえでは、関連会社との人的関係についての分析が欠かせない。関連会社との関係性は、業界によって大きく異なる。それらを理論的に整理する必要がある。 また、研究の最終年度であり、これまでの調査結果のインプリケーションをより明確にするためにも、より広い産業における企業間関係についての研究が必要となる。 研究方法は先行研究のサーベイと理論構築が中心となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定していたよりも、旅費を安く抑えることができたため。
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