研究課題/領域番号 |
16K03868
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
吉澤 康代 香川大学, 地域マネジメント研究科, 准教授 (60567379)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ワークモチベーション / キャリア発達 / 中高年成人 |
研究実績の概要 |
【研究成果の具体的内容】本研究は、「ワークモチベーションのダイナミズムの理論化」を目指し、旭化成株式会社の協力を得て(1)中高年前期(技術系30代後半、13名)、(2)中高年中期(事務・技術系40代管理職、14名)、(3)中高年中後期(事務・技術系50代前半管理職、15名)を対象にヒアリングを実施した。調査項目は「入社以降のモチベーション変化・変容とその要因」「モチベーションの初期体験」等である。前年度「中高年前期(30代後半、20名)ヒアリング」では、営業職に共通するワークモチベーション要因変化を発見し、それらが営業職としてのキャリア発達と対応関係にあることを示した(企業主導型キャリア発達)。平成29年度では比較的企業主導ではない「技術系」を対象にヒアリングを行った。その結果(技術系30代後半、13名)はM-GTAを用いて分析し、(1)技術系社員としての自律・一人前化、(2)目標達成とプロセス充実による達成感、(3)新しい技術を生み出し、世に出すやりがいのプロセスを明らかにした。分析結果は2017年5月研究協力者との検討会で内容の精査と実務面への応用について議論した。
【研究成果の意義、重要性】本研究では、中高年成人を対象に入社時から現時点までを振り返る形でモチベーションの移り変わりをヒアリングしており、2つの点で意義がある。モチベーションの既存理論は、調査時点のモチベーションを捉えて理論化する傾向にあるが、本研究では同一対象者について入社以降モチベーションが移り変わるプロセスに焦点を当てたことで、モチベーションの上昇・低下には共通要因が影響している可能性を見いだしつつある。もう1つは、年代が上がるにつれて、モチベーションの語りが現象から概念へと変化し、特に50代前半では自身のモチベーションの理論化が就労意欲とキャリア発達に影響する可能性が見えてきた。高齢化社会の人材マネジメントなど実践面への応用も期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、ほぼ当初の計画通り(1)中高年中期(40代、14名)のヒアリング調査、(2)中高年中高期(50代前半、15名)のヒアリング調査を実施したが、当初予定を超えて(3)技術系の中高年前期(技術系30代後半、13名)のヒアリング調査を追加で実施した。
また、当初、50代はまとめて20名を対象にヒアリング調査する予定だったが、年代が上がるほどキャリアやモチベーションの多様さが増す現状に直面し、中高年中後期(50代前半)と中高年後期(50代後半)とに分けてヒアリング調査することとし、平成29年度は前者の調査のみを終えた状況である。
(3)技術系の中高年前期(技術系30代後半、13名)を追加調査したことと、前年度3月に実施した「キャリア」についてのワークショップは参加者が5名と少なかったことから、開催時期の見直しを行い、平成30年度6月の実施とした。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、前半で(1)中高年中期(事務・技術系40代管理職、14名)、(2)中高年中後期(事務・技術系50代前半管理職、15名)を対象に実施したヒアリング結果について、グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた分析を行う。その後、中盤で(3)中高年後期(50代後半、15名)のヒアリング調査を行い、後半は(4)(3)の分析及び既存分析結果(中高年前期、中高年中期、中高年中後期)との比較検討を行う。また、(5)「キャリア」についてのワークショップは、平成30年6月に実施する。分析結果については、本研究協力者との検討会などを経て、「ワークモチベーションのダイナミズムの理論化」を試み、また実務面への応用についての提案を行う予定である。
当初予定ではアンケート調査を予定していたが、ヒアリング調査の結果をグランデッド・セオリー・アプローチで分析する手法で理論化を試みることを優先する。また、ワークモチベーションの既存理論への貢献が期待できることから、当初は国内の学術雑誌や専門誌への論文投稿を予定していたが、海外への論文投稿を試みることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)次年度使用額が生じた主な理由は、前年度同様、当初ヒアリング調査結果の「テープ起こし(外注費)」を想定していたが、調査内容から調査者が記録を書き起こすことになり、外注費が発生しなかったためである。また、「キャリア」についてのワークショップの参加者減少を改善するため、開催時期を検討した結果、年度末(平成29年3月)から次年度(平成30年6月)に変更したことから開催にかかる費用が発生しなかった。
(使用計画)次年度使用額については、実査及びその打ち合わせ、調査結果についての検討会などの旅費及び当初予定していなかった海外への論文投稿にかかる費用(翻訳校正など)に充当する予定である。
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