【研究成果の具体的内容】本研究は、「ワークモチベーション(以下、WM)のダイナミズムの理論化」を目指し、旭化成株式会社の協力を得て(1)中高年前期(2016年度:事務・営業・技術系30代後半、20名)、(2)中高年前期(2017年度:技術系30代後半、13名)、(3)中高年中期(2017年度:事務・技術系40代管理職、14名)、(4)中高年中後期(2018年度:事務・技術系50代前半管理職、15名)、(5)中高年後期(2019年度:事務・技術系50代後半、16名)を対象にヒアリング調査を実施した。主な調査項目は「入社以降のWMの変化・変容とその要因」「モチベーションの初期体験」である。 これら調査からの主な発見事項として、(1)WM要因は年代の移り変わりに従って要因そのものが変化するケースと要因の中身が変容するケースがある、(2)職種(営業職、技術職)に共通するWM要因があり、それぞれの職種におけるキャリア発達とWM要因変化が対応関係にある、(3)中高年中後期(50代前半)から中高年後期(50代後半)においてもWM維持・向上要因があり、その要因は「役職(担当課長と課長・部長)」「役割」によって違いが見られたことである。
【研究成果の意義、重要性】本研究の意義は主に2つある。WMの既存理論は調査時点のWMを捉え、WMの向上要因と低下要因を別々に整理しているが、本研究では同一対象者について入社以降WMが移り変わるプロセスに焦点を当てたことで、WMの向上・低下には共通要因が存在し、その充足と欠乏がWMの向上・低下に影響している可能性を見いだした。 もう1つは、年代が上がるにつれて、WMの語りが現象から概念へと変化し、特に50代以降では自身のWMの理論化が就労意欲とキャリア発達に影響する可能性が見えてきた。これらは定年延長など高齢化社会の人材マネジメントの実践面への応用に貢献できる。
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