研究課題/領域番号 |
16K03870
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
近藤 信一 岩手県立大学, 総合政策学部, 准教授 (70707984)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | IOT / サプライチェーン / 水平連携 / 垂直連携 / 電子部品 / 製造装置 / ビジネスモデル / 市場獲得戦略 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、企業活動領域の新しい分野として近年注目が高まっているIOT(Internet of Things、モノのインターネット)について焦点を当て、IOTという新しいビジネス領域でどう事業展開をしていくべきか事業戦略を模索するべく、定性的実証研究手法を用いて、経営戦略的視点による独自の分析フレームを作成し、インタビュー調査を中心としたデータ収集と、データ分析と提言作成を行った。調査対象としては、日系電子部品メーカーと電子デバイス及び電子部品の日系製造装置メーカーに焦点を当てた。また、中国におけるIOTの取り組み『中国製造2025』も調査対象とした 研究の結果、日系電子部品メーカーが「市場」としてのIoTビジネスに関わるときの戦略ポイントとして、以下の3パターンを抽出できた。①プラットフォーマー(の一員)としての参入。自前で標準を取りに行くことがベストだと考えられるが、日本企業には難しいため、コンソーシアムに参加して標準を取りに行くことがベターである。②サプライヤーとしての参入。そして、時間軸で分けて考えるパターンとして、③サプライヤーとしての参入からプラットフォーマーとしての参入(但し、サブかニッチ市場)。日系電子部品メーカーは、上記の3つのパターンにより、IoT市場に対して市場獲得を目指していることが明らかになった。 研究成果の学術的意義としては、IOTを「市場」として捉えた戦略論的視点からの論文は少なく、「製品アーキテクチャ論」×「生産システム論」の両面から論じている点で意義があるといえる。また研究成果の、社会的意義としては、「市場」としてのIOTビジネスについて日系電子部品メーカー各社はビジネスモデルを絞り込むのに、試行錯誤の状態が続いている実状である。したがって、本研究の成果が、事業戦略策定やビジネスモデル再構築の参考資料として活用されることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は、定性的実証研究により製品のライフサイクル化の短期化が分業構造にどのような影響を及ぼすのかを検証するために、調査対象としてIOT関連ビジネスに注目し、IOT関連製品を製造する電子部品メーカーや電子部品製造装置メーカーに対してインタビュー調査を実施した。また、国内市場だけでなく、海外市場として中国に着目し、中国におけるIOT関連ビジネスの政策『中国製造2025』を現地で調査した。したがって、定性的実証研究としては、概ね当初の計画通り遂行出来たと考えている。平成28年度の課題としては、先行研究調査が不十分であり、IOTに関する理論的視点からの研究はプラットフォームや競争論によるものが多く、今後取引費用論など理論的視点から研究を深める必要がある。もう一つの課題としては、本研究の理論的の基礎になっている「製品アーキテクチャ論」「生産システム論」を深耕し、本研究によりマッチしたフレームワークを構築する必要がある。また、定性的実証研究としては、記述理論の段階(命題の抽出)にとどまっており、今後分析を精緻化させて規範理論の段階(一般化、モデル化)に進む必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、まず平成28年度の課題としてあげた項目の研究を進めて、論文の作成を目指す。論文作成の際は、これまでの研究を踏まえて規範理論の段階(一般化、モデル化)を目指す。 その上で、平成29年度は、分業構造の変化を把握するために、IOT関連ビジネスに引き続き着目し、発注サイドと受注サイドの両サイドに対するアンケート調査を実施する。さらに、アンケート調査の回答先に対して、フォローアップ・インタビュー調査を実施する。そのことにより、平成28年度の研究成果で浮かび上がったIOT関連ビジネスにおける新しいビジネスモデルが、企業間の分業構造にどのような変化を及ぼし、サプライチェーンにどのような影響をもたらすかを、定量的データと定性的データの両面から検証する。
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