本研究は、産学共同研究が企業のオープンイノベーション活動を推進する「場」にするための、大学や企業、教員や企業の研究者の果たすべき役割を明らかにすることを目的に、企業が大学に研究拠点を設置する大学独自の産学連携制度(大阪大学共同研究講座制度及び協働研究所制度)を対象とする事例研究として実施した。 今年度は、最終年度として、大阪大学協働研究所制度を活用した企業、同大学の産学連携部門及び他大学の類似の制度の調査を行い、大学による制度の運用、研究拠点の運営の権限、研究代表者の選定や処遇などの影響を検討し、学内に設置する企業研究拠点がオープンイノベーションの場として機能するための要件を考察した。 考察結果として次の2点を指摘する。企業においては、自社とは異なる研究環境の構築に向けて、企業派遣研究代表者が自らのビジョンを構築し、それ達成するための意欲と能力などが必要である。また、大学においては、企業派遣研究者のモチベーションを高めるため、企業派遣研究者の共同研究での役割や学内での身分など、大学側の制度やその運用を変更していくことが求められる。 今年の研究活動において、大阪大学で成功している対象企業が、他大学で類似の取り組みをしようとして、同じ大学の他の研究室や他社との連携をうまく進められないケースがあることが分かった。このことから、産学連携の大型化の推進がいわれている現在、研究から事業化まで展開することで効果的な産学連携を増やすために、本研究の成果を普及する取り組みが必要と考える。 今後は、企業から派遣される研究代表者の役割やその役割を十分発揮するために大学の制度やその運用を変えること、企業側もこれまで大学に派遣していた人材とは異なる人材を派遣することなどに関連して、より具体的な取り組みを提示できるよう研究を行う予定である。
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