研究課題/領域番号 |
16K03879
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研究機関 | 聖徳大学短期大学部 |
研究代表者 |
早坂 明彦 聖徳大学短期大学部, 総合文化学科, 准教授 (40238093)
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研究分担者 |
丹羽 浩正 八戸学院大学, ビジネス学部, 教授 (50387122)
幸田 浩文 東洋大学, 経営学部, 教授 (60178217)
前田 勲 聖徳大学, 情報処理教育センター, 教授 (60238855)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 男性育児休業取得者 / 働き方改革 / ワーク・ライフ・バランス / ダイバーシティ / キャリア形成 |
研究実績の概要 |
次世代育成支援法が施行され10年が経過したが、多くの企業では男性社員の育児休業取得者が少なく、10年間の時限立法であった同法がさらに10年間延長されることになった。なぜ我が国では男性社員が育児休業を取得できないのであろうか。また、実際に育児休業を取得した男性社員は、どのような思いで育児休業を取得したのか、育児休業で得た経験を職場復帰した時に、どのように活かしているのか。時間に制約された働き方をしている人達への理解、行動変容はあるのか。さらに、育児休業期間は彼らのキャリア形成にどのように影響しているのか。アメリカやスウェーデン等の仕事と家庭の両立をしている国々との比較を行い、我が国の働き方の問題点を調査・分析し、仕事と家庭の両立が可能な働き方の改革を探求・提言することを研究目的とし、平成28年度は、主に基礎文献研究と男性社員が育児休業を取得している企業の人事担当者との面接調査を実施した。 まず、基礎文献研究では、ヨーロッパ諸国と日本の制度の違いが明らかになった。EUでは、育児休業を男女労働者の個人的権利と位置付けており、男性の育児休業が女性と同じレベルで期待されている。日本の場合、育児の担い手としての休業保障という意味合いが強く、親が育児をすることは権利であるという意味合いは薄いといえる。 次に、面接調査を行った人事担当者は、男性社員が育児休業を取得することに前向きな考え方をしているが、現在の企業の経営状態からすると人手不足で代替要員の確保が難しいこと、対顧客との営業ルートを持っている社員の場合は、人間関係が大切であり代替社員を派遣しにくい等の問題を抱えており、現実問題として、男性社員が長期の育児休業を取得することが困難な要因になっている。また、地方都市の企業の場合、三世帯同居も多く男性社員が育児休業を取得するという風土が整っていないことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的である、アメリカやスウェーデン等の仕事と家庭の両立をしている国々との比較を行い、我が国の働き方の問題点を調査・分析し、仕事と家庭の両立が可能な働き方の改革を探求・提言するために、基礎文献研究と男性社員が育児休業を取得している企業の人事担当者との面接調査を実施した。 まず、文献研究については、スウェーデンを中心に行い「研究実績の概要」にも書いたように順調に進展した。また、国内外の論文、文献研究による理論的な研究を行い、暫定仮説の設定と検証、および吟味を行うことができた。さらに、次世代育成支援法に基づき行動計画が適切であるという認証を平成28年度に受けた企業のデータをデータベースに追加した。 次に、面接調査については、男性社員が育児休業を取得できない原因の調査・探求、および、仕事と家庭の両立が可能な働き方改革を探求・提言するために、人事担当者に面接調査を実施した。平成28年度は、主に地方都市に所在する企業の調査になった。地方ならではの三世帯同居、男性は育児に関わらないといった風習との原因を明らかにすることができた。しかし、都市部の企業の人事担当者への面接調査を行っていないため、大量アンケート調査を実施するアンケート項目を作成するには、やや不十分と言わざるを得ず、次年度の課題としたい。 また、今回の調査で次世代育成支援法に認定された企業でも、認定されるべく行動計画を立てているものの、果たしてその基準を実質的にクリアしているか甚だ疑問を抱く企業もあった。各都道府県労働局が自分の県から認定企業を早く出したいという思惑が見え隠れし、実態にそぐわないのではないかと現状を疑ってしまう企業もあった。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度も引き続き国内外の基礎的な文献研究を通し、先行研究のモデル、基礎理論を研究し、問題の所在を明らかにし、仮説の吟味をしながら実証研究を行う。また、引き続き企業の人事担当者、および男性育児休業取得者への面接調査を継続させながら、並行して企業の人事担当者、および男性育児休業取得者へアンケート調査を行う。定量的な分析であるアンケート調査は、定性的な調査、分析から得られた情報や結果をもとに、質問項目の作成、検討、吟味を行った上で実施する。 具体的には、7月頃をめどに定量分析のためのアンケート調査を企業の人事担当者に実施し、企業の取り組みや男性育児休業者の状況、雇用管理上のメリット、問題点、改善点等を明らかにしたい。また、企業の人事担当者の協力を得て男性育児休業者に対するアンケートを8月頃に実施する。①諸外国で男性が育児休業を取得することが可能となった歴史的な背景や経緯、経済環境の変化、法律、社会制度等を文献研究から明らかにすること。②日本の育児休業を取得した男性社員へ調査を実施し、育児休業取得の前後でどのような働き方に変化が起きたのかを明らかにし、育児休業制度の取得が社員のモチベーションを上昇させ、働き方の意識を変え、生産性の効率化に寄与するという仮説を証明したい。そして、アンケート結果の興味深い企業に対しては、8月から9月にかけて、人事担当者や男性育児休業取得者に対する丁寧で丹念な面接調査を行う。その期間で十分な面接調査が行えなかった場合には、その後随時面接調査を行い、仮説の検討および修正を行う。 文献研究の成果と面接調査、アンケート調査の結果を分析しながら、日本と諸外国との比較、都市部と地方都市との比較をしながら、仮説を精緻化し、研究成果の一部を学会および論文として発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
繰越金の118,570円については、調査企業とスケジュールの調整が合わず面接調査が年度内に実施できなかったためである。また、75,916円は文献収集で書籍の発注が遅れたためである。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越金の118,570円については、面接調査を年度初めに行う予定で企業と調整済みで、すぐに旅費として使用する予定である。また、75,916円は年度初めに書籍の発注が行われ物品費として使用する予定である。
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