研究課題/領域番号 |
16K03885
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
小本 恵照 駒澤大学, 経営学部, 教授 (50554052)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | フランチャイズ / ビジネスモデル / 複数店経営 |
研究実績の概要 |
近年は、複数店を経営する加盟者が増加するなど、フランチャイズを使ったビジネス・モデルの多様性が増している。本年度は、こうした実態を踏まえ、多様なビジネス・モデルの中から特定のモデルが選択される理由を解明した。 1.具体的な実施内容 文献調査等を踏まえ、(1)フランチャイザーの戦略、(2)フランチャイザーがフランチャイジーに期待する経営資源、(3)フランチャイザーの組織文化という3つの要因に着目し検証すべき仮説を構築した。次に、仮説で使用した概念を計測するために、郵送による質問票調査を実施した。具体的には、ホームページや新聞・雑誌記事などからフランチャイズ事業を展開していると推定される1,458チェーンを特定し、2017年10月~11月に質問票調査を実施した。なお、ハガキによる督促も行った。その結果、158チェーンから返送があった。回収データを精査した上で回帰分析を行った。それによると、フランチャイズ加盟者に求める経営資源の違いによって、採用されるフランチャイズの形態が異なることが判明した。また、国際化を進める場合には従業員が独立する制度が導入されるケースが多いことも判明し、国際化戦略とフランチャイズの形態の関連が明らかとなった。組織文化についても、仲間文化と従業員独立型フランチャイズの関連が明らかとなった。 2.研究の意義と今後の研究 複数店経営のフランチャイズの選択に関する研究は従来から行われており、一定の知見は存在する。本研究は、フランチャイザーの戦略やフランチャイジーの経営資源といった、新たな要素を組み込むことによって、複数店経営の解明に新たな知見を提供したと考える。また、従業員の独立を支援するタイプのフランチャイズについては、これまで分析対象となっていないため、今回の研究結果は新たな実態解明につながったと判断する。今後は、分析内容の精緻化を図り論文として発表する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は企業全体の中におけるフランチャイズを利用したビジネスモデルの検討を行った。すなわち、フランチャイズを利用するか否かという区分によって分析を行った。平成29年度はフランチャイズ・ビジネスの中に多様なビジネスモデルが存在することを踏まえ、それぞれのモデルに対して検討を加えた。いずれも、計画どおり、(1)先行研究の検討、(2)仮説構築、(3)質問票による実証分析という手続きを完了した。質問票の回収については、回収率は低いものの、150程度の回答数を確保し、定量的分析が実施可能な回答数となっている。定量的分析については、回帰分析や質的比較分析(QCA)などを試み、対外的に公表可能な分析結果が得られ、一部は学会で発表を行った。また、フランチャイズの本質やビジネス・モデルに関する先行研究をレビューし、論文として発表した。 こうした内容を踏まえると、当初の計画を概ね達成しており、「遅れている」という評価には該当しないと判断する。しかし、下記の点から「当初の計画以上に進展している」とする判断は適切ではないと考える。 まず、質問票調査を実施したものの、引き続き分析内容の精緻化や再検討などを行う余地が残っていることである。例えば、QCAなど分析結果については、頑健性に関する追加の検討が必要だと判断している。また、仮説とは異なる結果も見られる。こうしたことを踏まえると、分析内容の改良や分析結果の再解釈などを行う必要がある。 次に、分析内容の再検討の必要性などから、論文として完成するべき時期が遅れていることである。分析結果を整理する中で、文章化を続けているが、現時点では発表するレベルに到達していない。早期に論文として発表できるように努力したい。 以上のようなことを踏まえ、「おおむね順調に進展している」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
フランチャイズを利用したビジネス・モデルでは、フランチャイザーがパートナーとしてどのような加盟者を選択するかという問題がある。本年度は、店長職を担当する様々なフランチャイジーや従業員を分析対象に、その動機づけなどに関する分析を行う中で、フランチャイズというビジネス・モデルの解明を行う。 1.理論研究 フランチャイズ・ビジネスでは、フランチャイザー(本部)、フランチャイジー(加盟者)、本部の従業員(正社員・非正規社員)、加盟者が雇用する正社員・非正規社員といった様々な人的資源が関係している。しかも、近年では非正規社員の戦力化などその中身は大きく変化している。 一方、フランチャイズ研究では、フランチャイジーや従業員の行動を、主としてエージェンシー理論を中心とする経済学的理論によって説明する。そこでは、フランチャイジーの動機づけを報酬という外発的な要因のみから説明するとともに、外発的要因を強めると動機づけも強まるという線形の関係を想定する。この説明には一定の説得力があるが、過去の実証研究をみると、エージェンシー理論が提示する動機づけを十分な妥当性を持って分析できていない面がある。たとえば、代理変数を用いた動機づけの計測となっているため、構成概念の内的妥当性に欠けることである。ついては、人的資源の多様性の増大を踏まえて、人的資源管理論やモチベーション理論などの最新研究に関する文献レビューを行うことで、より説得力のあるフランチャイズ理論の構築を行う。 2.実証研究 理論の構築を踏まえ、フランチャイジーなどに対して質問票調査を実施する。具体的には、店長に対して動機づけなどに関する調査を行う。店長には、フランチャイジー、正社員、非正規社員など様々なタイプが存在するため、それぞれの動機づけの比較分析を実施する。比較分析では、回収した調査票のデータを統計的手法などによって分析を加える。
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次年度使用額が生じた理由 |
1.次年度使用額が生じた理由 質問票調査の実施に当たり、当初は調査会社からデータを入手する予定であったが、フランチャイズ関連のホームページや雑誌等から入手するほうが効率的であることが判明したため、調査会社を利用しなかった。このため、データ入手費用が予定よりも少なくなった。 2.使用計画 平成30年度の質問票では、サンプル・サイズが大きいほどより充実した内容となるため、サンプルを増やす費用として使用することとしたい。
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