最終年度は、フランチャイズ加盟者と直営店の店舗管理者を対象に、動機づけプロセスの比較分析を実施した。現時点での結果をみると、フランチャイズ加盟者と直営店の店舗管理者では、(1)動機づけなどの水準に違いが見られる、(2)チェーンの課題解決への参加が外発的動機づけに与える影響の内容が異なっている、という点が明らかとなっている。 研究期間全体を通じての成果については、下記のように整理できる。 1.直営店ではなくフランチャイズが選択されるプロセスは複雑であるため、質的比較分析(QCA)を用いて分析を加えた。それによると、直営店の選択につながる十分条件については、関連する要因に関する3つのコンフィギュレーション(組み合わせ)が特定された。しかし、フランチャイズの選択につながるコンフィギュレーションは特定できなかった。一方で、使用したデータを回帰分析によって分析すると、既存研究でも確認されているエージェンシー理論に基づく結果が得られた。QCAで期待する結果が得られなかったのは、QCAでは「非対称的因果関係」を分析できたことが影響していると考えられる。つまり、先行研究は非対称的因果関係を考慮していないため、フランチャイズ利用の真の因果関係を特定できていない可能性があることを明らかにした。 2.フランチャイズというビジネス・モデルを詳細にみると、マルチユニット・フランチャイズや従業員独立型など多様な形態が存在していることがわかった。こうした多様な形態がどのような要因で採択されるかを分析した。分析結果をみると、マルチユニット・フランチャイズでは、大きな自律性を認め、本部とのコミュニケーションをあまり必要としない場合に選択されることが明らかとなった。従業員独立型については、国際化を進め、開業資金が少なく、仲間文化の特徴が少ない場合に選択されることが明らかとなった。
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