本研究の目的は、日本的労働環境において外国籍のメンバーが所属する「多文化チーム」を活用するために必要なリーダーシップのモデルの構築である。より具体的には、チームを運営する日本人リーダー(上司)がリーダーシップを発揮するための思考プロセスを明らかにし、図式化した説明モデルを示すことである。以下に、最終年度に実施した研究の成果および研究期間全体を通じて実施した研究の成果について述べる。 まず、最終年度においては、前年度までに明らかにした、多文化チームを比較的円滑に運営し活用している日本人リーダーの認知的複雑性が、いかにして次のリーダーへ継承されるのかという点について、インタビュー調査に基づき、説明モデルを作成した。多文化チームのリーダーの中には「自分は多文化チームを運営できているが、次のリーダーとなる部下がそれをできるかどうかはわからない」という不安を口にする者がおり、本研究は、そうしたリーダーたちが次のリーダーとなる部下へ自身の実践知を継承するうえで必要な継承のポイントを明示した点で社会的に意義がある。また、国内で活動する多文化チームを対象とし、上述の継承に焦点を当てた研究は見当たらず、その先駆的な研究として学術的にも意義がある。少子高齢化により、外国人の雇用者数が今後も増加し、数多くの多文化チームが形成されることが見込まれるため、本研究は社会のニーズに応えており、その重要性が認められる。 研究期間全体の成果としては、日本ではまだ少数派と考えられる「多文化チームを活用できる」リーダーの認知的複雑性の説明モデルを構築でき、また、その継承についても説明モデルを作成し、両モデルの関係も示すことができた。また、その研究方法についても分野横断的な新しい試みができ、そのワークショップを複数回開催した。したがって、この新しいテーマに関する研究の一つの土台を作ることがことができたといえる。
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