研究課題/領域番号 |
16K03890
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
河合 亜矢子 学習院大学, 経済学部, 教授 (00580432)
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研究分担者 |
大江 秋津 日本大学, 生産工学部, 准教授 (90733478)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | サプライチェーン・マネジメント / 組織間協働 / 知識共有 / 協働戦略 / ゲーミング・シミュレーション / SCM教育 / 気づき |
研究実績の概要 |
本研究の目的はサプライチェーン(SC)における組織間協働がチェーン全体のパフォーマンスに与える影響を、ゲーミングシミュレ ーションによって得られる実データを解析することによって明らかにすることである。 29年度は、当初の研究計画通り、前年度に収集したゲームデータの分析を行い、学会発表を行った。データの分析はゲーミングを用いたSC戦略行動の変化およびSCマネジメント教育の効果に関する統計分析と、組織間知識共有が戦略的行動とSCパフォーマンスに及ぼす影響に関するシミュレーション分析の2側面から行った。 分析の結果、いくつかの大変興味深い分析結果が得られた。まず、運営方法の良し悪しに関わらず、SC内での組織間交流を自由にし、話し合いを行うだけで、SCのパフォーマンスが飛躍的に向上することが証された。つぎに、ゲーミングを用いたSCマネジメント教育の効果については、このゲームを「面白い」と感じるかどうかが一つの鍵になっていることが分かった。「面白い」と感じたプレイヤーは、ゲームから各々、気づきを自発的に得ることができ、その気づきが学びにつながる。一方で、SCマネジメントの経験が豊富で、すでに関連知識を持ってる(と自身で認識している)プレイヤーの一部には、ゲーム自体を「面白い」と感じることができず、気づきも学びも薄いという結果になった。ゲームから得られる気づき・学びの種類や深さ、広さはプレイヤーそれぞれで多種多様なものであるが、一様に、知識共有の重要性と、リードタイムの認識の難しさは必ず実感できるようである。さらに、システムダイナミクス(SD)を用いて、モデリングを行い分析した結果、こちらでも、組織間の知識共有によって、SCパフォーマンスが劇的に改善する様子を再現することができた。SDモデルを用いた協働方策の同定、戦略分類が今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、29年度には国内外の学会での発表を行い、これらのフィードバックをもとに理論やモデル、分析手法や変数を見直して必要なデータの追加収集や再分析を実施することになっていた。この計画どおり、29年には国際会議での発表も行い、さらに、今後の論文投稿に必要となるデータの追加収集も行った。これらのデータについて統計およびシミュレーションモデルを用いた分析を行い、理論モデルの構築にむけて、共同研究者間で活発にディスカッションを行っている。
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今後の研究の推進方策 |
30年度は本課題の最終年度となるため、これまでの分析結果をもとに理論モデルを構築し、国内外の学会での発表および、論文誌への投稿を行う。さらに、今後の研究につなげるため、本研究の推進中に生じた大小様々な課題を整理し、総括する作業も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
データの収集とクリーニングのために物品費と人件費を見込んでいたが、既存のPCでデータの処理が行えたことと、見込んだ作業時間よりも迅速に処理が進んだため、人件費が学内で支給される研究費の範囲で賄えたため。差額で生じた余剰金は、平成30年度、論文投稿のための英文チェックと、学会出張のための旅費に当てる計画である。
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