ダイバーシティ経営とそれに適合的な人事管理システムに関する実証的研究を行う前に、①ダイバーシティ経営と適合的な人事管理システムの関係に関して、先行研究を踏まえて仮説を設定すると同時に、②経産省のダイバーティ経営企業100選受賞企業の事例紹介を分析することでダイバーシティ経営先進企業における人事管理システムの在り方を確認した。この両者の分析から、ダイバーシティ経営先進企業においてもそれに適合的な人事管理システムが十分に整備されていないことが明らかになった。上記の調査研究を踏まえ、ダイバーシティ経営の実現度である多様な人材の活躍度と、企業のダイバーシティ経営に関する取り組み、働き方、職場風土、人事管理システムなどの関係を明らかにするために、個人調査を行った。分析モデルとして、多様な人材の活躍度を被説明変数とし、説明変数は、人事制度(雇用管理と報酬管理)、ダイバーシティ&インクルージョン施策(D&I施策)、女性活躍推進施策、長時間労働是正施策、柔軟な働き方の制度の6つの構成要素を取り上げた。 それぞれを説明すると、ダイバーシティ経営に適合的な人事管理システムのうち雇用管理を「自己選択型キャリア管理」、報酬管理を「非年功型処遇管理」とした。 ダイバーシティ経営の促進施策を「D&I施策」とし、多様な人材の活躍の中でも日本企業では「女性活躍推進施策」の優先度が高いため、その取り組みを別に設けた。ダイバーシティ経営の土台となる働き方改革では、長時間労働の解消と時間と場所に関する柔軟な働き方の2つを分けて取り上げた。職場のマネジメントでは、部下の意見やワーク・ライフ・バランスを尊重している管理職を「WLB管理職」と名づけ、職場風土については、「多様性尊重風土」とした。
|