研究課題/領域番号 |
16K03892
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
高橋 宏幸 中央大学, 経済学部, 教授 (70104718)
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研究分担者 |
青木 英孝 中央大学, 総合政策学部, 教授 (90318759)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | グループ経営戦略 / グループ内兼担取締役 / 業務執行取締役 / コーポレートガバナンス / 戦略不全 / 制度的補完関係 / 社外取締役 / グループ利益 |
研究実績の概要 |
わが国グループ経営に不可欠のグループ戦略が戦略不全に陥っているのは株式会社制度に普遍的な部分と、わが国に特有の法制度さらには経営慣行といった特殊的部分によるところが大きい。株式会社であることから資本集積による競争力の強化が必然的となり、それに付随して経営の大規模化が経営制度の高度化・複雑化を促進する。経営組織の設計、トップ・マネジメント組織の編成といった経営制度の新展開は、会社法などの法制度に拘束されながら、新たに生起した問題解決に向けて動きである。 アクティビストが経営への大きな影響力を持つ今日、いきおい彼らを意識した経営とならざるを得ない。コーポレート・ガバナンスが株主の利害を代表する傾向が強くなり、株主利益至上主義とでも言える状況にある。それが果たして、本来の企業競争力をもたらしうるのか。社外取締役を増やすことは、透明性が図られ不祥事を少なくし、また幅広い見地からのアドバイスを可能にするなど間接的に経営に効果をもたらすことは否めない。しかし、1つのグループ単位として経営を行うグループ経営ではグループ外からの社外取締役ではなく、グループ内の兼担取締役によるグループ利益の追求という戦略的経営が求められる。このグループ戦略での兼担取締役の現代的意義と制度的補完関係における固有の機能を明らかにすることを意図して「兼任取締役制度と戦略的意義―競争関係の交錯的変容に関連して―」『企業研究』第31号、2017年8月をまとめ、戦略的グループ経営の遂行にあたって業務執行取締役の重要性を導き出し、社外取締役にはそうした機能は期待できないことを、「グループ利益の追求とグループ経営内兼任構造」『企業研究』第32号、2018年2月で示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ドイツのコンツェルンにおける戦略的対応についての分析を、制度結合に焦点を当てて進めていくという平成29年度に予定していた計画については、特に人的結合に関しては既存の研究ならびに調査結果の検討を部分的に進めることが出来た。しかし、期の途中に発生した学内事情により、研究時間のかなりを割かれたことと、そのハードな作業も手伝って体調を崩し、予定していたアメリカ並びにドイツに赴いての調査は断念せざるを得なかった。その結果、特に契約コンツェルンに該当する支配契約等の企業契約に関連付けたドイツ・コンツェルンの戦略的行動についてのドイツ側との共同調査は中断したままとなっている。今後の体調の回復を待って再開の予定であるが、回復がはかれない場合には、ドイツの既存研究調査結果を収集し、新たな分析視角からその分析手法を再検討し新たな結論を導き出したいと考えている。 また、ドイツのコンツェルンを日本のグループ経営に重ね合わせていくとき、戦略的単位という視点で考えた場合、それが純粋持ち株会社によって統括されたものであっても戦略的とはなりえていない。この点に関連して、第1点としてグループ利益という全体利益を子会社利益あるいは少数株主利益である部分利益に優先させるという法的規制の緩和の最新動向に注意が払われてこなかったこと。また、第2点として本研究に先立って行ってきたグループ経営力の源泉としてのドイツ・コンツェルンにおける統一的指揮の問題に結びつけるという点が希薄であったことが浮上した。今後、この点を踏まえて研究を進めていく必要性を感じている。 業務執行とグループ内調整で期待されるグループ内兼担取締役を際立たせるという点で、グループ外兼任取締役を派遣元企業の産業別、法的形態別、企業規模別に分類・分析しこれらと比較することがもとめられる。この点の研究を補足していくことが今後必要であることが明確になった。
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今後の研究の推進方策 |
アメリカ型のコーポレート・ガバナンスでは株主至上主義が貫徹し、わが国の企業経営も近年、アメリカ型のコーポレート・ガバナンスの影響を受け、株主利益を反映した取締役会での社外取締役数の増加、委員会設置会社における社外取締役の主導的な役割など制度的特徴が見られる。これとは対照的なドイツ型企業、特にドイツ・コンツェルンの戦略的行動を分析するにあたり資本的・人的そして経営的結合という3つの結合から成る制度的結合について、法制度、経営制度から分析していく。同一グループ内兼担取締役に焦点を置いたが、グループ間の兼任取締役、監査役会への外部グループからの参加、さらには派遣元企業の産業、法的形態、規模別に検討を加え、当該グループ経営でのその機能関係を分析し、同一グループ内兼任取締役の機能を浮かび上がらせる作業を今後進めていく。 当初予定していたドイツ側との共同調査が進まない場合には、既存調査結果を援用し、その調査方法、分析手法を検討した上で、そこでのデータを活用し、あらたな分析手法を用いて再検討し、新たな知見を導き出すという方法も検討している。 人的結合に関連して、その法的分析に加えて経営学的分析を進める。少なくとも、同一的グループ内兼担取締役についてはドイツでは少なからず研究蓄積があるが、その多くは法的検討に終始している。そこで、経営学的観点から人的結合の意義を明らかにする。また、わが国の場合、同一的グループ内での兼担関係は親子会社関係に多くが見いだされるが、それがグループ戦略を方向付けたりグループ経営力の柱になっているとは言えず、本社取締役会での社外取締役という社外からの兼任関係が注目されている。この社外取締役に代表される兼任関係との決定的な違いを示し、同一的グループ内兼担取締役の戦略的意義を明らかにする。その作業の前提となる、わが国社外取締役の現状分析を新たに付け加えて、研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
期中における学内事情の急変により、学事に関わる諸問題の対応に追われ、予定していた研究作業の時間んを確保できなかったことと、激務に追われ体調を崩し、海外での調査に赴くことが出来ず、予定してい作業に取り掛かることが出来なかった。 この3月に退職したこともあり、時間てきゆとりもできたことで、体力の回復を図りながらドイツとアメリカに時期をずらして出掛け、作業を再開する予定である。この渡航と滞在費、資料収集に予算の多くを割り当てたい。さらに、国内データについても追加する必要があり、その購入に予算の一部を充てる予定でいる。
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