本年度は,地域資源が持つ文化的要素に着目し,どのようにその要素が発掘,価値付けされ,商品化,収益化に至ったのかを日本ワインを事例に分析した。ワインは原料となるブドウの腐敗性の早さから現地で製造されることが多い。そのため、ワインの生産は地域と深く結びついており、その中で地域の風土を反映した独自の文化が形成されている。本研究では地域資源に関する先行研究を行った上で、日本ワインの歴史を辿り、これまで断片的に捉えられがちだった文化的要素を含む地域資源の新市場形成プロセスの流れを詳細に追跡した。その結果,日本ワイン市場の起点は明治時代までさかのぼり試行錯誤が続いたこと,その中で徐々に気候や風土など各生産地の特性や伝統的な生産方法を日本ワインの付加価値として実装する取組みが拡大したこと,消費者が嗜好品としての多様性を日本ワインに見出したこと、そして従来の枠組みでは十分に守ることができなかった付加価値を保護する新たな枠組みが整備されてきたこと等が明らかになった。
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