本研究では、連携やネットワーク資源の開発に関わる主体間の関係性の経時的な変化について明らかにする。 より具体的には、以下のような課題を設定し、解明することを目的としている。 第一に、プラットフォーム上での協働を促進する要因について調査をおこない、各主体が埋め込まれた制度的な阻害要因を超越するために、どのような行為を展開してきたかについて明らかにする。 第二に、あらたな協業をともなう事業活動が資源獲得において正当化された時に、彼らの活動の成果が、協働のプラットフォームの発展にどの程度還元されるかについて明らかにする。 第三に、連携のプラットフォームに所属するメンバーに対するヒアリング調査、そして協働に関するコミュニケーションに関して記述的な調査をおこなうことで、協業の成果とキャリアの関係を明らかにすることが試みられた。 2年目より、京都の伝統産業の職人とフランスのデザイナーによる協働によって作品を生み出して行くプロジェクトにオブザーバーとして参加し、どのような関係のマネジメントを行っているかについて調査を展開した。当初予定されていた隅田、仙台の調査環境の状況が変わって来ているのと参与観察の許可が下りなかったため、定点観測を継続的におこなえるだけの段階に達してないことがわかった。そのため、これらの2つの事例の調査は2年目の段階で打切りとなり、京都の事例においてのみ、有益なデータを得ることが可能となった。協働のプロセスを調査する上で、より深いレベルでの観察を継続的におこなえるものとして京都の事例に切り替え、京都市とパリ市の承認のもとでプロジェクトに参加が可能となり、2年間のフィールドワークを行ってきた。その結果、協働のプラットフォームが、創造的なコミュニケーションを促進するには極めて大きな限界と可能性が混在することが明らかになった。
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