研究課題/領域番号 |
16K03905
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
西村 陽一郎 神奈川大学, 経済学部, 准教授 (10409914)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 模倣戦略 / 追従戦略 / 特許戦略 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本企業の特許戦略の決定要因を計量実証分析することで、①前社長との社会的なコネクションに基づき社長交代後、特許戦略が大幅に変更されているか、②新規参入分野に関する特許戦略の模倣行動が情報優位性または自社他社間の競合関係の安定性によって説明がつくのかを検証することを目的とする。 本年度では、②を中心的に研究を行った。第1に、本研究テーマに関係する国内外の研究状況を把握した。これは、拙稿「コピーの実態」商経論叢にまとめた。それによると、米国では約7割の新製品がすでにコピーされていた。また自社の開発情報が漏洩する平均月数は12ヶ月から18ヶ月以内であった。コピー品開発費対新製品開発費は平均で約65%であった。コピー品開発期間対新製品開発期間は平均で約70%となっている。よってコピー品は費用的な側面でも期間的な側面でも平均的に見ると安い。 さらに、本年度では、ライバル企業による模倣行動から発明を保護するために企業としてはどのようにしたらいいのかといったテーマについて分析を行い、そしてそれを拙稿「中小企業における特許保有・営業秘密とパフォーマンスの関係」にて公刊した。分析結果によれば、発明の特許戦略は企業の売上高に有意に正の影響を与えている。しかし、発明の秘匿戦略は、売上高に有意に負の影響を与えているといった結果を得た。 本分析結果は、ライバル企業による模倣行動から発明を保護するためには、どちらの保護戦略を選択すれば、より望ましい結果となるのかを考察する際の重要な基礎資料となりうる。このような研究は、日本企業が知財戦略を策定する上で重要な経営的インプリケーションを我々に示してくれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度については、本研究テーマに関して、1本の論文が公刊されており、もう1本の論文については2018年に公刊が予定されている。よって、成果を着実に論文へと結びつけている。その点で、概ね順調に進展している。今後は、社長交代後、前社長と社会的なコネクションが新社長の特許戦略に影響を与えているかを明らかにし、もし影響を与えている場合には、それがどの程度なのかを統計分析し、論文にまとめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、研究計画通り、今年度は、中間成果の報告である。昨年度まで2本の論文にまとめている。それ以外のテーマについては今年度はまず12月に開催されるAsia Pacific Innovation Conferenceがインドで行われるため、そこで中間成果を報告するため、エントリーしようと考えている。 また、上記目標を達成するために、、社会的コネクションを持つ社長交代と特許戦略については、統計分析を実施するにあたり、社会的コネクションと社長交代に関して既に共同研究を行っているカリフォルニア大学アーバイン校のMargarethe Wiersema先生及び一橋大学大学院国際企業戦略研究科の鈴木健嗣先生に夏頃に協力を仰ぎ、本研究について何度か助言を頂く予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度は、分析結果を海外の学会で報告するという成果よりも国内雑誌で公刊するという成果をより重視して求めたため、海外学会への出張がなくなり、そのため、次年度使用額が生じた。本年度は、繰り越した助成金を利用して、前年度とは異なり、国内雑誌で公刊するという成果よりも、分析結果を海外の学会で報告するという成果をより重視して求める予定である。
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