研究課題/領域番号 |
16K03911
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
宮本 大 同志社大学, 経済学部, 教授 (30434682)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 人的資本 / 人的ネットワーク / 人的資源管理 |
研究実績の概要 |
2017年度の主な成果は以下の通りである。 日本企業の教育訓練において人的ネットワークの利用可能性を検討する上で、どのような視点が必要かを検討した。まず海外の研究からは人的ネットワークが組織や個人の成果やパフォーマンス、さらには人的資本の蓄積にも寄与することが多様な視点、幅広い業種において明らかにされ、企業が積極的に能力開発に人的ネットワークを活用することのメリットが示唆された。しかし、日本における研究は質、量ともに十分ではなく、人的ネットワークとパフォーマンスの研究は、製薬産業に特化した状態で、他の製造業をはじめ、非製造・サービス産業における研究はほとんどみあたらない。また人的資本の蓄積効果についても人的ネットワークが企業内教育訓練において効果的かどうかという議論が可能となるほどの研究蓄積がないといった状態である。 より具体的には次に4つ点からアプローチすることが有用であることが明らかになった。一つは、人的ネットワークの有無が効果的なのかという視点である。これはつながっていることと、つながっていないことではどちらが有利かということであり、人的ネットワークの存在価値の検討である。二つは、人的ネットワーク構造や性質の効果という視点である。これはネットワークの中心にいること、密度の高いネットワークを持っている、他のネットワークとのブリッジになっているなどどのようなネットワークが有利かを検討することになる。三つめは、人的ネットワークを機能させるための外部環境についての検討も重要であろう。これは職場の環境や地域特性などが含まれる。そして最後に、人的資本のみの視点となるが、人的ネットワークと人的資本の関係性の検討である。これはそれぞれが代替関係にあるのか、それとも補完関係にあるのか、またどのような条件でそれぞれの関係性が生じるのかといった点を明らかにすることが必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
分析モデルの検討において、当初、技術者に限定して検討する予定であったが、技術者以外の部分にも検討の枠を広げたために進捗がやや遅れている。また、この広がりのため、調査規模を少し大きくする必要性が生じ、当初の予算では実行が難しくなり、2017年度の予算を2018年度にまわすことにした。こうした予算の問題をクリアする対応を取ったことも進捗が遅れている原因の一つである。 この結果、当初の進捗からやや遅れることとなったが、依然として技術者に焦点を当てていることに変わりないものの、それ以外にも適用できる検証仮説を構築し、より幅広い研究成果が得られることが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度では前半にアンケート調査を実施し、後半に仮説を検証し、研究成果を発表する予定である。実施する調査では、2017年度に明らかになった点を意識して質問内容を設定していく。とりわけ海外の研究でさえ企業における人的資源管理、特に能力開発のコンテキストにおいて人的ネットワークの重要性は認識されてはいるが、実際にどのような役割を果たしているのか、具体的にどのように活用するのか、などについて十分に検討されていないことが指摘されており、能力開発における人的ネットワークの活用を如何に実践的なものに落とし込むための情報を明らかにすることを目的に調査・研究を推進していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進める上で計画よりも研究対象にやや広がりをもたせることがより良い研究成果につながると考えた結果、調査規模を少し大きくすることにした。しかし、当初の予算では実行が難しくなり、2017年度の予算を2018年度にまわすことで予算の問題をクリアするという対応を取ったためである。
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