本研究は、研究開発者の人的ネットワークがもつ情報チャネル機能と人的資本との関係が研究開発という創造的活動に与える効果を検証し、得られた知見から人的ネットワークによる効果的な研究開発人材の育成のあり方を検討するものである。 最終年度の現時点までに得られた主要な知見は大きくわけると3つある。まず1つは、ネットワークがもつ効果について、多様な情報交換ネットワークを活用している研究開発者は創造的行動という主観的な成果だけでなく、特許出願を含む技術開発や新製品のリリースなど客観的な成果も高い水準にあり、情報交換ネットワークの多様性が研究開発者個人の仕事パフォーマンスの向上に寄与していることが明らかとなった。 2つ目として研究開発者が情報交換ネットワークから入手する情報について、社内の研究開発者からは相対的に多様な情報を、また社内他職場の非研究開発者や海外自社の研究開発者からはビジネス情報や自社製品情報など主に研究・技術関連以外の情報を、そして国内外部や海外他社の研究開発者からは先端技術など主に技術関連情報を入手するといったネットワークごとの特徴がみられた。 そして3つ目として研究開発者の多様なネットワークの形成要因について、国内だけでなく海外へとネットワークを広げるには研究開発者の職業キャリアにおける国際移動、とりわけ学会などを含む海外出張が重要な要因の一つとなっていることが示された。また、この学会などの海外経験は社会人となってからだけではなく、大学院時代での経験もネットワーク形成に寄与していた。 以上の議論より、研究開発人材の育成において企業はネットワークを国内外に広げて活用することが効果的であることが示唆されている。また現在も引き続き、数量データを用いて、ネットワークから得られる情報の内容に関してより詳細な分析を進めており、研究成果が得られ次第、速やかに公表する予定である。
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