最終年度となった本年では,以下2点の視点からBOPビジネスとソーシャル・アントレプレナーシップについて,調査研究を進めた。 第一に,BOPビジネスの起点に基づく類型化と比較研究である。BOPビジネスの起点に関して,ソーシャル・イノベーション研究における非技術的イノベーションと技術的イノベーションの考え方を援用しつつ,ソーシャル・アントレプレナーシップの留意点を見いだしやすい類型軸として,ニーズ起点型ソーシャル・ビジネスとシーズ起点型ソーシャル・ビジネスとに大別して,両者のビジネスモデル創造上の留意点を検討した。コンセプトとビジネスモデルの創造について,前者が,より早い段階での確立が必要となるのに対して,後者は現地での試行錯誤を繰り返して時間を要する傾向があることが見て取れた。 第二に,BOPビジネスとコーポレート・ソーシャル・アントレプレナーシップに関して,ソーシャル・ビジネスと正当化行動の視座から事例分析を進めた。その結果,環境変化に合せた正当化行動を駆使するコーポレート・ソーシャル・アントレプレナーシップの重要性を明らかにするとともに,それを発揮させるための要件として,CSR部の機能再考,人的マネジメントのあり方,組織のミッションおよび寛容度を抽出した。
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