研究課題/領域番号 |
16K03917
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
玉田 俊平太 関西学院大学, 経営戦略研究科, 教授 (60312790)
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研究分担者 |
宮田 由紀夫 関西学院大学, 国際学部, 教授 (20278584)
岡村 浩一郎 関西学院大学, 商学部, 准教授 (80580349)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | イノベーション |
研究実績の概要 |
近年の製造業において、グローバル化やモジュラー型アーキテクチャの導入によって、設計と製造の分業が進展した。『フラット化する世界』に描かれているように、“製造”は主に税制や要素コストといった立地条件の優位な国や場所で活動が行われているが、“設計”は必ずしもそうではない。なぜなら、生産性や開発能力といった企業固有の能力や、企業を支える産業クラスターが企業競争力の決定要因として大きく寄与していると考えられるからである。 本研究では、「設計特化型企業の多くが、なぜ税制や要素コストといった立地条件の優位な国にではなく、相対的に不利な条件の地域に立地し・活動しているのか」について明らかとするため、立地の比較優位と企業固有の競争優位の両方を考慮に入れた総合的・定量的な解明を行う事を目的としており、研究初年度においては、米国の設計特化企業が、立地要因で不利であるにも関わらず、地域の優位(産業クラスター)と企業固有の異質性によって総合的優位性を確保している点に関してより高い説明変数を探るとともに、コスト的に不利な日本に立地していながら高い競争力を保っている複数の企業(資生堂、高砂香料、SONYの企業発ベンチャー等)に対し、インタビュー調査を行った。 資生堂および高砂香料においては、顧客の「ペルソナ(職業、年齢、性別、志向などからなる仮想的人物像)」を構築し、当該ペルソナが感じるであろう「良い香り」という曖昧な概念を捉え、数千種類にも及ぶ香料のレシピへと落とし込む能力を持つ調香師の育成過程を調査した。基本的には社員から香りに対する感度の高いものを選抜し、3年以上の期間をかけて育成するそうだ。大変なコストである。 しかし、調香師の育成にコストがかかると言うことは、他業種の企業が容易には参入出来ないということも意味する。これらインタビューにより、パラドクスの解明に一歩近づけたように思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の計画では、「米国の設計特化企業が、立地要因で不利であるにも関わらず、地域の優位(産業クラスター)と企業固有の異質性によって総合的優位性を確保している点に関して、より高い説明変数を探る課題がある。当大学のイノベーション研究センター(IRC)の知見と協力を得ながら、この課題に取り組む」とされているが、これら計画を概ね順調に行うことができたためおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は半導体だけでなく、他の産業分野の設計特化型企業にも、応用性があるかについて、検証を試みる。また、これらの研究成果を学会発表、論文等を通じて広く一般に公開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画道理順調に研究を遂行することが出来たが、多少の未使用額が生じた。次年度の研究費と合わせ、効率的な利用に努めたい。
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次年度使用額の使用計画 |
研究所席の購入およびインタビューのための出張旅費の充当する予定。
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